図書館に通う 5

 宮田昇さんの「図書館に通う」からの話題です。
 この本では「彼もまた神の愛でし子か」というタイトルで、大原富枝さんの著作を
切り口に洲之内徹さんの世界の話に転じていきます。

彼もまた神の愛でし子か―洲之内徹の生涯 (ウェッジ文庫)

彼もまた神の愛でし子か―洲之内徹の生涯 (ウェッジ文庫)

「だが、私が洲之内徹をもっと知りたかった理由は、その小説の評価ではない。昭和
四十八年、洲之内徹がはじめて書き下ろして出版した美術エッセイ集『絵のなかの散
歩』(新潮社)に、知人の画家、郄良真木を取り上げているからである。」
絵のなかの散歩 (新潮文庫)

絵のなかの散歩 (新潮文庫)

 ということで、郄良真木さんと浜田糸衛さんによる童話が絶版になっていて再刊に
むけて協力することに話はつながっていきます。
「二人の相談は、ふたつあった。ひとつは、昭和三十五年に出版された浜田文・郄良
絵の童話が、久しく絶版状態で、また読者からの多数の要求があるにもかかわらず、
なぜか増刷されない。どうしたら出版社をして増刷させることができるか。もうひと
つは、持ち込んだ二人の次作がその社で出版されないことになってにもかかわらず、
渡した郄良の絵が戻ってこない。再三催促すると、紛失したというのである。
 はじめは、信じられなかった。その出版社A社が、かずかずの児童文学者を世におく
り出した、定評のある出版社だったからである。」
野に帰ったバラ (1960年)

野に帰ったバラ (1960年)

 出版社A社とありますが、お二人の作品を1960年に刊行した会社というので検索を
してみましたら、すぐにわかってしまうことですが、児童文学で定評のある会社と
いうのは、そのとおりでありまして、これは会社がよろしくないのか、それとも窓口
になった担当編集者に問題があったのか、宮田さんが書いていなければ、そんなこと
あるわけないといってしまいそうです。