先日から読んでおりました「新宿『性なる街』の歴史地理」を駆け足で読了であり ます。
この本がどのような内容であるかについて、あとがきに著者自らが書いてくれてい
ます。
「 第1章はこの本の主な舞台である新宿の「性なる場」の原点である『新宿遊郭』
について、その場所にこだわって解明する。
第2から4章は東京を中心とした『赤線』総論で、その成立、実態と経済、そ
の終焉を論じる。第4章は売春防止法成立後か現代に至るセックスワークの問題
にも及ぶ。
第5章は新宿の『青線』の詳論。『赤線』と併せて昭和戦後期の新宿の『性な
る場』の形成を歴史地理的に分析した都市論。
第6章は『赤線』女給と銘仙の関係に着目したファッション論。
第7章は闇市起源の飲み屋街『千鳥街』を探索し、新宿『ゲイタウン」の成立
にかかわるミッシングリンクを検出する。」
このように書いてあるのを眼にしますとえらいむずかしいと受け取ってしまいます
が、ふんだんに図版がはいっていて、間にコラムもあることから、非常に読みやすく
仕上がっています。
この本が、これまでの類書と違っているのは歴史地理を論じるとともに、セックス
ワークに従事する女性への共感を明らかにしていることです、
つまるところ、当方に伝わってきた著者のメッセージをつなぎあわせると、つぎのようになりであります。
「いろんな事情で環境や学歴に恵まれなかった女性が、才覚と努力でのし上がって
いける世界は必要だ。ただ落伍者が死屍累々にならないよう、一定のセーフティネット
を用意する必要はある。
私は、『売春禁止法』の『基本認識』を根本的に見直す必要があると思っている。
その上で、セックスワーカーの人権(身体の自由・働く権利)と安全(暴力・性病・
望まない妊娠の回避)を基本に据えた法整備が必要だと考える。そして、法改正に
あたっては、当事者であるセックスワーカーの意見が十分に反映されることがなによ
り大切だと思う。」
三橋順子さんにいわせると女性だけでなく、男性についてもそういうことになるの
でありましょう。もちろん、これは当方の読みでありまして、遊郭、赤線、青線と
いった、いまは死語になった言葉と場をリアルに実感させるというものというのが
前面にありです。