年譜制作者

 当方は、TVなどでとりあげられる芸能ゴシップは好きでありませんので、番組を
見ることは、ほとんどないのですが、基本的なところではゴシップはきらいでない
ようで、そのせいか作家の年譜を見るのは楽しみの一つです。
 どのような方が、どのような年譜を作成されているのかなんて、思ってもみたこ
とがないのですが、小川国夫さんの年譜制作を担当されていた方を書いた本を手に
しました。研究者さんのアプローチとはまるで違う作家の熱心なファンが、勉強を
重ねて作家の年譜をつくり、それを作り続け、年譜制作を辞めるにいたる経緯が書か
れています。

年譜制作者

年譜制作者

 著者の山本さんは、小川国夫さんの「かくて耳開け」1972年5月刊から小沢書店から
でた「小川国夫全集14巻」1995年10月刊まで二十数年にわたって主要な年譜を作成し
ています。最初には単行本をだすときに収録のものだけでは厚さが足りないので、
年譜を加えようということになり、その年譜作りに小川さんの熱心なファンである
山本さんに白羽の矢があたったとあります。最初の時には小川国夫さんを研究して
いる学生さんが論文作成のためにつくった書誌があって、それを基本として手掛けたと
あります。
 これからあとには、自分としてさらに良いものを作ろうとして、それこそ「小川氏に
関する調査も、『山本の歩いた後は、ペンペン草も生えない』という打ち込みよう」に
なったそうです。
 このへんのことを書いたくだりの引用です。
「小川氏が何か作品を発表するたびに、それを前行に続けて記録して行くという終わり
のない作業が始まった。単に記録するだけならそう面倒な仕事ではない。小川氏が、
何時、何処へ、何を書いたか、ということ、また、年譜に記録した方が良いと思われる
出来事はなかったかどうか、あれば内容を聞いて記録しておく、というようなことを、
落ちのないようにやって行くということは大変なことだった。きちんとした年譜を編ん
で行くという仕事は、こういう気の抜けない日々の上に初めて成っているのである。」
 こうした作業の上で、どのような年譜を作っていくかというのが、もう一つの難問と
なります。それで、他の年譜はどうなっているのかという調査がはじまるわけです。