さてどちらへ

 ページを稼ぐためにといって手にしていた辻原登さんの「花はさくら木」を、なん
とか読みおえました。

花はさくら木 (朝日文庫)

花はさくら木 (朝日文庫)

 これにそんなに時間をかけていてはいけないのでありますが、あちこちに気になる
ところがありまして、ここのところをさらに読んでみたら面白かろうと思いました。
 その一つは、次のくだり。
「このとき、後水尾は強引に譲位して、女一宮を天皇位につけた。明正天皇である。
女帝の誕生は、奈良時代の第四十八代称徳天皇以来である。しかし、女帝は中天皇
(なかつすめらみこと)と呼ばれ、あくまで男子天皇即位までの中継ぎというのが
基本であった。」
 この小説の登場人物の女性にかかわることでありますが、天皇家の姫が江戸時代に
女帝となるかどうかという物語も底のところにありまして、ここで中天皇(なかつ
すめらみこと)ということに言及されています。
 歴史に弱い当方は、こういう天皇が存在したというのは、原武史さんの「皇后考」
で知ったのですが、この小説の主要な登場人物の一人は、後に女帝となったというこ
とです。作中の、この女帝に関するエピソードのほとんどは辻原さんの想像の賜物で
ありましょうが、この女帝のことが気になることです。
 気にはなるものの、この女帝について手頃なものを見つけるのはちょっと大変であ
るようですので、もう一人の登場人物について見てみます。
この「花はさくら木」は、辻原さんが、後になって発表した「韃靼の馬」につながる 
話題がありまして、それは江戸時代の日本と朝鮮半島の交易ですが、それを担った
対馬藩のことが、両方の作品で描かれています。
韃靼の馬

韃靼の馬

 ここで唐突に、対馬へと行こうかということになりました。もちろん本の世界の中
での話であります。「対馬」といえば、すぐに思い浮かぶのは、次の作品ですね。
対馬は、日本海の西の果て、朝鮮海峡に位置し、上島、下島の二つの大島と九十あ
まりの小島とから成る山がちの列島である。西北は朝鮮に対し、東南は対馬海峡をへ
だてて壱岐ノ島に対する。上島と下島とは近接し、北北東から南南西にむかって長く、
南北七十二キロ、東西十八キロ、総面積七百三平方キロ、その大きさは、わが国の
主要な島島のうち、沖縄本島佐渡ガ島および奄美大島に次ぐ。島の中央やや東寄り
を山脉が縦に走り、五百メートル前後の山山が幾重にもかさなって東海岸へ急劇に
傾斜している。」
 これまで何度か手にして、途中でとまったままになってしまっている大西巨人さん
の「神聖喜劇」の書き出しであります。ここまででも、ちょっと引いてしまいそう
ですが、大西さんの文章としては、ここは読みやすいもの。
 当方は、これまで1978年にでた光文社版を架蔵していたのですが、これとあわせて
光文社文庫を確保し、読みすすめていくことはできぬかと思っているのですが、いつ
になりましたら、読了との報告をすることができるでしょうかね。
神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫)

神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫)