本日の本 2

 昨日に引き続き、本日も四方田さんの「母の母、その彼方に」を読んでいました。
非常にあらい読み方ではありますが、なんとか最後のページにたどり着きました。

母の母、その彼方に

母の母、その彼方に

 この本については、四方田さん自らが新潮社「波」3月号「母の母、その彼方に」
刊行記念特集インタビュー「夢見るブルジョワ娘ができるまで」というので、次の
ように記しています。
「ある女性史研究家から、四方田柳子という人物に心当たりがないかと尋ねられたの
です。全く覚えのない名前でしたが、念のために母に確かめたところ、祖父の最初の
妻でした。それから、彼女のことを調べていくうちにさまざまなことがわかってきた
のです。」
 ということで、この本を書くことのきっかけは、四方田さんの祖父の最初の妻で
あったわけです。四方田さんが子どもの頃は、すでにその方は亡くなっていて、
四方田さんの祖母にあたるひとが後妻さんとなっていて、その方の娘が四方田さんの
母ということになります。
 祖父のこと、そして祖父の最初の妻、自分の祖母となる次の妻、そして実の母を
描いていくことで、四方田家の三代の社会階層のアップダウンをあきらかにしていき
ます。四方田さんの認識では、すでに没落した、かってのブルジョワ一族となりま
す。
 よその一族ののぞき見でありまして、それが大阪財界の良い時代を背景にしている
ものですから、とっても興味深いことでありますが、四方田さんの後書きのなかには、
「四方田会」総裁なんてのが登場しますので、むかしほどではなくても、いまも一族
の結束をはかる場は残っているのですね。
 というのが、一つの感想でありまして、もう一つはあまり書かれていないことに
対して関心をもつことになったということでありますね。
もちろん、それについては、「母の母、その彼方に」というタイトルにもあるように
最初から脇におかれてはいるのですが、この文中に、「母の夫、私の父」については、
全体で何行が割かれているでしょうね。
 祖父の喜寿のお祝い時の家族写真がありますが、もともと横長の写真であると思い
ますが、中心部を切り抜いて掲げられています。この写真には左はじに三歳の時の
四方田さんと、その母が写っていますが、母の左隣に身体半分うつっていて、頭と
耳の一部がうつっている男性は、ひょっとして幻の父でありましょうか。