大村線つながり

 先日に四方田犬彦さんの新刊と一緒に届いた二冊が、次に読む候補のものです。
そういいながら、ちょっとほっておかれそうですが、この二冊は大村線つながりの
ものとなります。(大村線とは、もちろんJR九州大村湾にそって走る線路。
佐世保諫早を快速シーサイドライナーでしたら1時間ちょっとでつなぎます。)
 一冊は、佐藤正午さんの「小説家の四季」

小説家の四季

小説家の四季

 岩波書店の単行本の新刊を購入したのは、けっこう久しぶりです。佐藤正午さん
の岩波エッセイシリーズの四冊目です。これまでは、光文社文庫になってから購入
していたのですが、前作の「ありのすさび」がでたのは2005年とのことで、十一年
ぶりの新刊です。これが文庫になるのを待っていれば、あと数年はかかるでしょう
から、ここはひとつ新刊で買ってやりましょうと思いました。
 このタイトルになっている「小説家の四季」というのは、岩波の「世界」に連載
され、それが終わってからは岩波書店のWEBマガジンに掲載されたものだそうです。
 この本のあとがきからです。
「『小説家の四季』というタイトルの連載エッセイは。もとは、ある企業が発行元
の季刊誌から依頼を受けて始めたもので、・・その連載はのちに『小説のヒント』と
タイトルを変えて、季刊誌が休刊となる2002年まで続いた。そこまでの連載分は、
すべて過去のエッセイ集に収録されている。
 で、2002年でいったん途切れたその連載エッセイ集を、あらためて『小説家の四季』
と題して復活させて舞台を用意してくれたのが、過去三冊のエッセイ集の担当編集者
いつものように坂本政謙君である。」
 以上の引用文のうち、いつものようにというところには、傍点がうたれています。
とにかく、この編集者がいなければ、当方は佐藤正午さんのエッセイを知らずに終わっ
たでありましたでしょう。
 しかし、佐藤正午さんに「小説家の四季」ということで、長期にわたって連載させ
た企業の季刊誌というのは、今になって考えると特筆ものでありますね。1987年から
2002年まで15年も発表の場を提供していたのですから。いまは休刊となってしまって
いる雑誌は、「日機装株式会社の『BRIGHT』」とのことです。
 この岩波の本を手にして残念なのは、文庫本にはかならずついている、編集者坂本
さんの解説がないことでしょう。この元版から文庫となるまでに必要な時間は、これ
までのをみますと5年くらいでしょうから、それはがまんすることにしましょう。
 大村線でつながるもう一冊は、次のもの。 札幌から故郷 佐世保に戻って小説を書き始めた佐藤正午さんは、野呂邦暢さんの
存在に力を得て、作家修業を行ったと書いています。今回の「小説家の四季」にも、
みすずの「大人の本棚」によせた佐藤正午さんの文章が収録されています。
 野呂さんが亡くなった頃に、佐藤さんは小説を書き始めていて、野呂さんの本のどこ
にも佐藤正午さんのことはでてきませんです。