未年といえば

 今年は、乙未(きのとひつじ)とのことです。1955(昭和30)年生まれの人が還暦を
迎えることになります。未年といって思い浮かべますのは、「羊の歌」でありますね。
未年になったら、加藤周一さんの文章を読もうと思っていたのですが、あまり具体化
せずに、本日を迎えました。
 昨日にブックオフに立ち寄りましたら、思いのほか美しい「羊の歌」(生・続)が
108円で販売されていました。これは、買わないわけにはいきませんです。

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)

続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)

「羊の歌」は、加藤周一さんの著作のなかで一番読まれているものではないかと思い
ますが、ちょうどこれが新刊ででたとき、当方は田舎の高校生でありましたが、なぜ
か購入をしています。それからすでに50年近い歳月が経過であります。
 今にいたるまで「羊の歌」は岩波新書の青版でありまして、これ以外の版というの
は、次のものしか思いあたりません。
加藤周一著作集 (14)羊の歌

加藤周一著作集 (14)羊の歌

「中肉中背、富まず、貧ならず。言語と知識は、半ば和風に半ば洋風をつき混ぜ、
宗教は神仏のいずれも信ぜず、天下の政事については、みずから青雲の志をいだかず、
道徳的価値については、相対主義をとる。人種的偏見はほどんどない。こういう日本人
が成り立ったのは、どういう条件のもとにおいてであったか。私は例を私自身にとって、
そのことを語ろうとした。
 題して『羊の歌』というのは、羊の年に生まれたからであり、またおだやかな性質の
羊に通うところなくもないと思われたからである。」(「羊の歌」あとがきから)
 これを書いていたときの加藤周一さんは、50歳になる前後の時期でありました。
「人種的偏見はほとんどない」と書いているということは、なにかの具合であるかも
しれないということでしょうか。「宗教は神仏のいずれも信じず」というところは、
亡くなる間際に加藤さんがキリスト教に帰依したと聞きますと、若い時には、あまり
断定的なことはいわないほうがよろしいかと思うことであります。