本日は山猫忌

 本日は長谷川四郎さんの命日となります。
 本日は、昨日に手にしていた篠田一士さんの「創造の現場から」で取り上げられて
いる長谷川四郎さんの作品を読むこととしました。
 「群像」1981年2月号に掲載されていた「カダラのビール」であります。篠田さん
は、この作品は「心にのこる。」として、次のように記しています。
「これはいい文章だ。わざわざ筋書を紹介するほどのものではないが、スピーディで、
明快、なによりも目くばりのきいた視野のひろさがシベリアのひろびろとした空間、
そこに住む人びとののどかな人間臭さをさらりと浮かび上がらせているのは並々では
ない。こういう作品相手に言うのは、いささかはばかれるが、長谷川氏の散文が今日
の日本文学のなかで果たしている役割は、もっとあきらかにされ、評価されるべき
だろう。」
 80年12月に二度目の発作で倒れて、この作品が生前に発表された最後のものとなり
ました。長谷川夫人による口述筆記による作品ですが、篠田さんによる評を眼にしま
すと、そうした身体的な状況で書かれているということが信じられないことです。
 この「カダラのビール」という作品は、長谷川さんが亡くなってから刊行された
「山猫の遺言」に収録され、今も読むことができます。
「山猫の遺言」の発行日は、1988年4月19日となっています。

山猫の遺言

山猫の遺言

 ここにありますように、発行日は一周忌となる4月19日ですが、本が店頭にならん
だのは、5月となっていました。