古田晁記念館資料集 2

 柏原成光さんは「古田晁記念館資料集」について、次のように記しています。
「これには、古田晁宛書簡142通と古田晁の書簡61通が収められている。
著作を残さなかった古田を知るのに貴重なものになっている。編者の一人、晒名は
筑摩書房の編集者。傍注も詳しく、労作である。」
 編者の代表は、晒名昇さんとなっていますが、資料集の編者あとがきには「編集に
ご助力いただいた井上達三氏、立澤節朗氏、ご協力いただいた筑摩書房、ならびに
資料調査にご尽力いただいた木浦江理子氏に深甚の謝意を表します。」とありまし
た。
 この本は、先日に書き込みをいただいた東川正彦さんにご紹介いただいたように、
「書籍はA5版、上製ハードカバー、口絵4ページ、本文324ページ、精興社のきれい
な活字で印刷されています。書簡の他に古田の葬儀で読まれた中野重治中村光夫
の弔辞が原稿の写真付きで掲載されています。」であります。
 これは行政が運営している資料館資料集でありまして、もともとは非売品のもの
であるようですが、残部があるのうちは2500円で配布をしていると思われます。
普通の出版物でありましたら、上記の内容、それも編者が「複雑厄介な組版と造本
の完成のためにご尽力いただいた精興社・・・ならびに佐々木デザイン事務所に、
同じく深甚の謝意」とありますように凝った紙面でありましたら、とうていこの
料金ではあがらないでしょう。
 この時代は、どこの自治体もすっかりこういうことに予算をつけなくなっていま
すが、まったく良い時代にこの資料集は世に出たものと思います。
 古田晁宛書簡で一番多く収録されていますのは、深瀬基寛さん25通、唐木順三
んの12通、中野重治さん、上林暁さん、臼井吉見さんの各8通、永井荷風さん、
田辺元さんの各6通、中村光夫さん5通というのが、多く収録の方々でありました。
口絵には各氏からの書簡と古田さんが発した書簡が掲載となっています。
 上林暁さんの書簡は、昭和41年から48年まで年賀状や礼状となりますが、左手
で書かれた書簡は、ページ下部の傍注のところに写真で掲載となっていて、内容
よりもその葉書の文字に見入ってしまうことです。