久しぶりに本屋へ 2

 松田哲夫さんの小学館よりでた新刊です。

 この本の帯には「天性の編集者に縁あった多士済々 綺羅星の如き大宴会」とあり
ます。筑摩書房の編集者として、長く活動をしていましたが、編集者としては社内で
も異色の存在であったのだろうと思います。入社にいたるまでの経歴からして変わっ
ていますから、このへんの事情については、この本にもでてきますが、松田さんの
「編集狂時代」にくわしかったはずです。
編集狂時代 (新潮文庫)

編集狂時代 (新潮文庫)

 当方が松田さんの存在を意識したのは、赤瀬川原平南伸坊とともに「桜画報社」
を名乗っていたことによってであります。当時は、あちこちでこのメンバーで雑誌
ジャックをやっていて、一番愉快であったのは「現代の眼」の付録であった論壇地図
でありますね。当方は、「現代の眼」を購入していないので、知人から見せてもらい
大笑いをしたのですが、あの論壇地図は、コレクターアイテムで購入しておけばと
いまも残念に思います。
この地図のことは、南伸坊さんのくだりで登場します。
「『現代の眼』では、論壇・文壇の人間関係をマンガで鳥瞰した図を、新年号に掲載し
ていた。赤瀬川さんに、この論壇地図の依頼がきたのだが、論壇・文壇事情にうとい
彼は無理だと思った。しかし、ぼくが新左翼の系統図を描きながら離合集散の経緯を
一晩語り続けたことを思い出し、『どうしようか?』と水をむけてきた。ぼくは
喜んで、その話にのった。」
 これが71年新年号のことで、このあと新年号の定番特集となっていきます。
そしてその3年目のことです。
「さて、七三年新年号では、本誌から離れ、A半さい版・二色刷のポスター風付録と
なった。面積でいれば、前年比1.5倍以上。全体の構図は初年度に近く、今度は赤い
血のような海が全体にひろがっている。七二年には連合赤軍事件、横井正一の出現な
どのビッグニュースが続き、識者が多彩な談話や論を発表していた。そこで、その人
らしい発言を探してきて、吹き出しに収めることにした。ぼくは新聞・雑誌をめくって
コメント・発言を集めていった。
 こうなると、いかにも本人がその場でしゃべっているという感じにしたくなってき
た。そこで似顔絵の達者な南伸坊さんに加わってもらった。」
 この366ページの南伸坊さんのところに、南さんが自らを描いた自画像の背景に、
この論壇地図がかかげられています。「現代の眼」のバックナンバーは一冊百円も
しないのではないかと思われますが、このポスター仕立ての「論壇地図」は、1万円
とはいわないものの、そのくらいの値段がついていてもびっくりしませんですね。