夏の一冊 4

 スティーブンソンの「新アラビア夜話」でありますが、これの岩波文庫版の書影を
掲げたいと思うものの、残念旅先であります。岩波文庫に関心のある方は、先刻ご承
知でありますが、かっての岩波文庫は「範をかのレクラム文庫にとり」でありまして、
いまよりも背が高いものでした。当方は、このサイズが好きでありまして、値段が
安くて興味のあるものでしたら、すぐに購入するのでした。
 ただ、この旧岩波文庫は戦前のものでありますからして、読みにくいことです。
 今回の旅に携行した「新アラビア夜話」には、訳者による序がついているのですが、
その冒頭には、次のようにありです。
「スティーヴンスンは近代英文学者の中で最もよく吾が国に紹介された者の一人であ
るから、恐らく茲に其の伝記などを詳説する必要はあるまい。『寶島』は大抵の人が
少年時代に一度は胸を轟かせる海賊奇談で、『ジーキル博士とハイド氏』は映画で
お馴染になっている者も少なくないと思ふ。専門学校卒業以上の学校の学生生活を
経験した者なら、誰でも彼の短編小説の一つ二つには原文で接触していよう。」
 専門学校卒業以上の学生生活を経験というのは、この序が書かれた時代には、
相当に恵まれた人でありましたでしょう。当時の進学事情を考えれば、当時の専門
学校というのは、今の大学進学者とは比べるべくもなしです。
 当方などは、スティーヴンスンのものをなにか原文で読んでいただろうかと、つら
つら考えることです。「子どもの詩の園」という詩集を教科書で目にしたことがあり
ました。
 旅先で入手したのは、光文社古典新訳文庫の「新アラビア夜話」でありました。

新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫)

新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫)

 かっての岩波文庫は抄訳でしたが、光文社のほうは、全7話を訳したものであり
ます。