旅のとも 5

 今回の旅先への地縁ということをいうならば、持参すべきは次のものであったで
しょう。結局のところ「屋根裏のプラハ」を持参して、この本はおいていかれること
になったのですが、旅から戻って、これを読みましたら、なんとこの作品の舞台と
なっているところを散策していたことになります。

 先日に大阪国際交流センターのさざんかの垣根の写真を掲載しましたが、あの場所
を通ってむかったのは、上汐町の公園でしたが、この公園の前には校庭の狭い小学校
がありまして、なんとこの小学校が作者 織田作之助の卒業した学校のようでありま
す。どうりで、織田作之助の小説には谷町九丁目とか、上本町六丁目という地名がで
てくるはずであります。
「青春の逆説」の一節には、次のようにありです。
「お君は上塩町地蔵路地の裏長屋に家賃五円の平屋を見つけて、そこに移ると、早速、
『おはり教えます』と、小さな木札を軒先に吊した。・・・
大阪の路地にはたいてい石地蔵が祀られていて、毎年八月の末に地蔵盆の年中行事が
行われたが、お君の住んでいる地蔵路地は名前からして、他所の行事にまけられ
なかった。」
 本当に大阪のまちを歩いていますと、ちょっといくと地蔵さんが祀られています。
これは当方の地域ではあまり見られないことでありまして、まして地蔵盆というの
は大阪に住む家族に聞いて、はじめてその様子がわかったのです。
 一度地蔵盆の時期にたずねてみたいものですが、この時期は盛夏ですからして、
とっても暑さに耐えられそうもありません。