戦後と戦前の間 3

 先日に丸山真男さんがなくなったのが8月15日と記しましたが、小尾さんはいつなく
なったのでありましょうと検索をかけてみましたら、2011年8月15日に死亡とあるのを
見て驚きました。そうか、小尾さんが亡くなったのは8月15日であったか。
 2011年8月といえば3月に震災があって、原発の事故などもあったのですが、これに
関してどのような感想を抱かれたことでしょう。これについて、眼にすることはでき
ないようです。
 小尾さんの著書「昨日と明日の間」の最後のところには、「明日へのヒント」という
文章がおかれています。この文章の一部を引用してみましょう。
「私はこの世界に生まれて、すでに87年過ぎました。
 生活に大きな変化を与え、時代的な区分感情を与えるものは、もちろん外部環境です。
社会です。具体的には1945年の日本敗戦です。そこには180度の方向転換がありました。
(中略)
 第二次世界大戦終結後の数年は、少なくとも、そうした悪から善への転換の、幻想を
もたせる時代だったといえるでしょう。そして1950年の朝鮮戦争から、冷戦の三十年を
経てイラク戦争、さらに二十一世紀の金融危機によって、社会の構造は崩壊の危機状況
に面しています。
 これは、人間が自らつくり出した危機です。
 いま、カジノ経済とか金融工学とか、異常な新語で示された経済変動と社会不安の
増大があります。また、軍事兵器の巨大生産物を抱える大産業は、その消費者としての
戦争を、予想しています。
(中略)
 こうした現実の世界のなかで、出版という経済的企業に求められるものは明白です。
経済指数の上下運動のブレに抗し、また知識を扱うメディアの質の低下に抗し、何を
とり、いかにそれを方向づけるか、という問題です。」
 大量消費ということを前提とした経済が行き詰まると、経済は軍需への依存を高め、
その帰結として内政は暴走してしまうのでしょうか。