追悼 松山俊太郎さん 5

 昨日に引用した種村季弘さんの「松山俊太郎さん」についての銭腹巻伝説であります
が、当方などは石堂さんとか、種村さんのこのようなカリカチュアライズされた文章に
よって、おもしろおかしく松山さんをイメージしているようです。
 専門の学問分野でかかわっている人たちには、そんな先生ではないですよといわれそ
うであります。
 松山俊太郎さんの著作「綺想礼讃」の栞にある吉村明彦さんの文章で紹介されている
本から芋づる式に、勝手に追悼であります。
 吉村さんがあげている本のもう一冊は、次のものです。

後方見聞録 (学研M文庫)

後方見聞録 (学研M文庫)

 この元版は、コーベブックスからでたものですが、この学研M文庫は元版にたっぷりの
増補がついてのお徳用です。
 松山俊太郎さんに関しては、元版の時から収録されています。この文章の初出は「現代
詩手帖」昭和50年6月号だそうです。
 加藤郁乎さんによる「松山俊太郎」さんの肖像の書き出しは、松山さんの文章の引用
からとなります。
「わたくしが『悪の華』初版・再版を所蔵するのは、九分通り偶然の結果である。
またわたくしは一介のサンスクリット愛好者にすぎず、『悪の華』について独特な見識
も持ち合わせなければ、これに触発されて生じた業績も存しない。つまり、『悪の華』を
『わが一本』としてあげつらふべき、『人』と『物』の結びつきが無意義なのである。
とは言ふものの、編輯子の意図を忖度すれば、わたくしがここで開き直るのは、一種の
思ひ上りでもある。問題は、『ある珍本を意外な人物が如何にして手にいれたか』で
あらう。かく考へれば、わたくしといふ窮惜大が、少くとも日本においては稀覯と目され
る『悪の華』を所有し得たこと自体が(いはゆる『書痴』連にとっては)一話柄となるか
も知れない。」
 以上は、加藤郁乎さんが引用しているものですが、松山さんの文章は題が「『悪の華
初版・再版」として「本の手帖」誌 昭和三十七年五月号に掲載のものだそうです。
この文章を全部読んでみたいと思うのですが、残念なことに、これは「綺想礼讃」には
収録されていません。