しんとく問答 2

 後藤明生さんは、1989年に近畿大学に勤務するようになって、それ以降大阪に通う
ようになり、大阪にマンションを借りて住むようになったとあります。後藤明生さん
には多くの作品があるのですが、しばらく購入していなかった後藤さんの本を買った
のかであります。
 ひさしぶりに購入したのは「しんとく問答」でありますからして、これは大阪に
移り住んだことをきっかけに書かれた作品であるということと、田村義也さんの
装丁であるということが購入させたのでありましょう。
 

しんとく問答

しんとく問答

購入したのは新刊の時でありますから1995年となります。これは阪神淡路の大震災の
年にあたりますが、その頃には後藤さん大阪にお住まいであったはずですが、この
大阪連作集には、地震のことはでてこないようであります。
 この小説を購入した時には、まさか後年になった小生が「大阪が親戚」となって、
後藤さんが描く土地を歩くとは思ってもみませんでした。
「私はとつぜん、一度この駅で下車したことを思いだしました。時刻はやはり午後5時
前後だったと思いますが、そのときは俊徳道探求のためではなく、マンション探しの
ためでした。六年前のことです。大学からの帰り途、電車の窓から見えたマンションを
目当てに降りていってみると、分譲マンションにつき賃貸はしないということで、
諦めました。・・・・
 もしあのマンションが分譲でなく賃貸マンションだったとしたら、あるいは六年前
から私は俊徳道の住人になっていたのかもしれません。」(「贋俊徳道名所図絵」)
 この時に、後藤さんが俊徳道駅の周辺で住まいを決めましたら、当方がなじむこと
になった道筋とは重ならないことになったのですが。