最近買った文庫本

 「考える人」文庫本特集でも話題になっていますが、文庫本は千円で超える価格の
ものは、珍しくもなんともない時代となっています。新潮文庫ではあまりそういう
高いものはないようですが、プレミアム文庫といわれるものの価格は軒並み千円こえ
でありましょう。
 このように高くなってしまうと、ついついすこし出回ってブックオフとかアマゾン
で中古で探そうかとなってしまいます。そうもいかないような本がありますと、
えいやっと購入ですが、文庫を二冊かって3千円なんて時代であります。
 最近購入した文庫本です。
 

夜の読書 (ちくま文庫)

夜の読書 (ちくま文庫)

 かって文芸春秋社の編集者で、そのあと東海大学で教鞭をとっておられましたが、
辻原登さんとならんで丸谷才一スクールのお一人です。これまでイワナ釣りの本とか、
冒険家植村直己さんについての本を発表していますが、これは当方の領域外でありま
した。須賀敦子さんについての文庫(そういえば、新潮です。)があって、これは
購入しておりました。
 毎日新聞の書評欄で丸谷さんを助けての活躍でありましたが、やっとここで発表し
たものがまとまって読めるようになりました。
すこし丸谷スクールのお仲間に対しての取り上げが目につき、それが気になることも
あるやに思います。そういうときは、丸谷才一辻原登池澤夏樹という方々の著作に
言及している文章を読まないというのもよろしでしょう。(ついでにいえば、松家仁之
さんについてのものも、当方が http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20131105 で
「沈むフランシス」のねたばれはいかがなものかと記している書評は、この方のもの
でありました。これは「夜の読書」に収録されています。)
 それを抜きにしたとしても、この書評集はおすすめであります。
 舟越保武さんの「全随筆集」についてのものを、すこし引用です。
「舟越の文章は、彫刻の大家の手すさびではけっしてない。おそらくは大読書家でも
あった人の、抑制と洗練がある。・・・エッセイには、彫刻の仕事と直接には関わり
のないものと、彫刻にまつわるものと二種類あるのだが、どちらの場合も対象にまっ
すぐにせまっていく、強い視線が生き生きと働いている。」
 舟越さんの本で文庫になっているのは、「巨岩とはなびら」があります。
巨岩と花びら―舟越保武画文集 (ちくま文庫)

巨岩と花びら―舟越保武画文集 (ちくま文庫)

 舟越さんの娘 末盛千枝子さんの「人生に大切なことはすべて絵本から教わった」
についての書評もおかれていました。末盛さんはずっと児童文学の編集者をなさって
いた方でありますので、湯川さんには旧知の方であったのかと思いますが、良いもの
は良いであります。
 そういえば、新潮社「波」8月号は、末盛千枝子さんの連載5回目であります。
今月号には、離れて暮らす彫刻家の父から小学生の娘にあてられた手紙が紹介されて
います。娘にこういう手紙を書く父というのは、どのような人であるかです。