年の初めに 4

 そういえば、日曜日に本屋へといって、今年最初の一冊目を購入しました。
今年のはじめに相応しいものをと思って、新刊書店の棚を見ていたのですが、
これがあまりぱっとしませんです。昨年にいきつけの書店グループが破綻し、
それに引き続き、全国チェーンでそこそこの品ぞろいの本屋が、ほとんど撤退に
近い形で移転したものの、往時の棚は復活しませんです。
 先年の新刊発売前に、小さな書店に注文をだした本は、刊行されてすでに3週間
以上もたつのでありますが、いまだに入荷の知らせがありません。そんなに部数の
多いものではありませんし、よく売れるものであればネット本屋とか大書店系に
押さえられて出回らないということはあるでしょうが、けっしてそういうもので
はないので、これは小さな書店にスムーズに流れてこないというのは、ネット書店
で買えといわんばかりではないでしょうか。
 最近地元で購入することができなくなりつつあるのは、ちくま文庫新刊でありま
して、岩波文庫はとうに新刊をいれるところはなくなっています。講談社文芸文庫
ちくま学術文庫などもみなくなっています。ウィンドウショッピングの楽しみと
いうか、眼の保養にもなりません。
 そんなこんなで、ことしの一冊目は次のものであります。

 これのもとは、週刊文春の連載コラムで最初の単行本の時のタイトルは、「気に
なる日本語」でありますからして、これがどうして「伸びる女優 消える女優」と
いうタイトルになるかといえば、こうしたほうが売れるからでありましょう。
当方にしても、これに収録のものでまず眼にしたのは、若い女優についての文章で
ありますものね。
 小林信彦さんでありますからして、単に売ろうという目的で改題したものでは
なく、最後のあとがきの副題が「伸びる女優 消える女優」となっているからで
す。小林信彦さんは、80歳をこえているのですから、その年齢でこの好奇心は
なんと立派なこと。ちょっと雰囲気は違うものの、大岡昇平の「成城だより」を
思い浮かべることであります。