本の雑誌 1月号 3

本の雑誌」一月号に掲載の「私のベスト3」を見て、一番印象に残ったのは、次の
くだりであるようです。
 このように記しているのは、作家北村薫さんであります。
「個人全集といえば、あっと驚くものがあった。今年の<三冊>というわけにはいか
ないので、最後に記す。東京創元社から、創元推理文庫として刊行された四巻の
大坪砂男全集」。そして、秋田県の皆進社から出た『狩久全集』六巻+『四季桂子
全集』一巻である。四季は狩の妻であった人。共に、編者の、作家に対する愛と
完璧な本作りへの情熱の見事な結実である。」
 この北村さんのものは、「私のベスト3」の冒頭におかれているものですが、この
「あっと驚く」という表現に思わずとまってしまいました。
文庫版による「大坪砂男全集」は、かっての全集の古書価が高くて手がでなかった人
には、待望のものでありましょう。以前の全集を四分冊にしたもので、さらに編者で
ある日下三蔵さんによる解題がついています。

 この大坪全集については、春日武彦さんもあげておられます。
 ちなみにこのお二人の生年を確認してみましたら、以下のようになっていまして、
学年でいいますと当方をはさんで、一つ上と下でありました。
北村 薫(きたむら かおる、1949年12月28日 - )
春日 武彦(かすが たけひこ、1951年(昭和26年)9月25日 - )
 お二人とも、学生の頃に大坪砂男全集(もちろん薔薇十字社版)を買うことができ
なくて、それからずっとチャンスをうかがっていて、すでに元版を入手しているかも
しれませんが、今回の文庫全集刊行に喝采をあげているのでしょう。
 これは当方にも共通であります。
( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20130422 )

 大坪砂男といえば、まずまずご存知の方もいるでしょうが、「『狩久全集』六巻+
『四季桂子全集』一巻」というのを目にして、あああれねとわかる人は、日本にどの
くらいいるのでしょう。こちらのほうは限定300部とのことですが、まさにあっと驚く
というのは、こちらのほうでしょう。