追悼 すまけい 2

 すまけいさんは、アングラ劇団では有名な存在であったようですが、その時代の
舞台はまったく見たことがありません。1972(昭和47)年には役者であることを
やめてしまって、その後しばらくは舞台にはあがらなくなっていました。
 再デビューしたのは1985(昭和60)年のことでありました。これは1983年に
こまつ座をおこした井上ひさしの尽力によるものです。こまつ座は83年に「頭痛肩こり
樋口一葉」で旗揚げするのですが、この後、すまけいさんがただ一人の専属俳優となり、
すまけいさんを重要な脇役とする作品がどんどんと制作されるのでありました。
 すまけいさんの代表作は、井上ひさしこまつ座作品にありますし、当方にとっての
井上ひさし作品とは、すまけいであるといってもいいでしょう。劇中のすまさんは、
現実の井上ひさしさんよりも、それらしく、特に「きらめく星座」での演技は忘れられ
ません。すこし田舎くさくて、そそっかしくて、まじめというのが井上作品でのすま
さんの役どころですが、こうした役は作者にかぶることでしょう。
 当方は、当時は井上ひさしさんのファンでありましたので、TVなどのドラマもおっか
けで見ておりましたが、すまけいさんの演技をはじめて見たのは、NHKドラマであった
「国語元年」であったようです。このころは、すまけいさんが芝居に戻ってきたと話題
になっていて、このドラマは注目されていたように思います。
 舞台では、「きらめく星座」が86年から何回か再演されていますが、主役はかわれど
すまけいさんは変わらずに同じ役を演じていたはずです。そしてもう一つの代表作と
なった「父と暮らせば」は94年から、梅沢昌代さんとの二人芝居でありますが、
役者をかえての再演や映画化もあるものの、この作品はすまけいさんと梅沢昌代さん
の二人しか考えることができません。
 すまけいさんは、こまつ座と離れることになるのですが、その時に、井上作品の
新作を上演するというのに、本があがらないのに疲れてしまったというようなことを
目にしたことがあります。
 すまけいさんのウィキペディアをみましても、舞台作品への出演歴の記載がない
ことから、いつまでこまつ座にいたかわからないのですが、当方は、このあとこまつ
座と井上ひさしさんの世界から離れてしまったように思います。
 今になって思うと、当方を井上ひさしさんに結びつけていたのは、すまけいさんの
魅力であったのですね。新潮社からでていたカセット文庫の一冊に井上ひさしさんの
「新釈遠野物語」がありまして、これの語りはすまけいさんでした。
 すまけいさんは、こまつ座を離れて映像の世界で活動をするのですが、最後に
見たドラマは、「塀の中の中学校(2010年10月11日、TBS)- ジャック・原田 役」で
ありました。この作品は脳梗塞で身体が不自由になって、しばらく休んでいたあとの
作品でしたが、このドラマを見ることができてよかったことです。
 すまけいさんのような役者さんは、このあとでてくるでしょうか。少なくとも、
国後島出身の役者は、こののちもうでることはないでしょう。