訃報 山口昌男さん 2

 亡くなった山口昌男さんを偲んで、山口さんが生前に発表された「私の死亡記事」
についてを話題としています。
 「インドネシアの山中で」というタイトルですが、この本に寄稿している他の方々が
どのような書き方をしているのか、まったく知っておりませんが、昨日にすこし引用を
しましたが、インドネシアに残してきた書物を探しにいって、山中で亡くなっていた
ところを発見されたというのは、山口昌男さんにとって、理想の亡くなり方であったの
でしょう。
 この文章の引用を続けてみましょう。
「著書は数多く、英仏伊西の論文をすくなからぬ数を遺しているが、異色なのは『踊る
大地球』(晶文社 1999年刊)と題するドローイング集があった。理論的には『内田
魯庵山脈(晶文社 2001年刊)が後世に読まれており、他の大半は忘れられ、珍本探求
家には密かな喜びを与えている。」
 2000年に書かれたものでありますから、そのころに刊行されたり、近刊予定であった
書名があがっていますが、この文章には、他の著書は一切登場しません。
後世に「他の大半は忘れられ」というのは、どのくらい時間が経過してからのことであ
りましょう。
「二十一世紀から活動を停止し、ノマド化し、独りで世界中のネットワークを利用して
放浪しているという噂が伝わっていたが、氏を記憶している友人のコメントでは、ブル
島の山中に克明に細心の注意をこめて書いた『お千代船』という手製の揮毫本をある処
に秘め匿して来たので、いずれとりに行かなくてはならないと言っていたので、その
書物を探しにいく途中で奇禍にあったものと思われる。誠に惜しい、馬鹿馬鹿しく、
限りなく滑稽な人生であった。」
 インドネシアに残してきた書物は、「『お千代船』という手製の揮毫本」だそうです。
「お千代船」と目にしても、ぴんとこないのですが、わかればそれはいかなくてはと
なるでしょうか。