これから買う本というのは、山口昌男さんによる「エノケンと菊谷栄」であります。
- 作者: 山口昌男
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2015/01/17
- メディア: 単行本
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「この人は、一時期ほとんど忘れられていたが、ここ数年の間に、昭和六年から十一年
頃までエノケンのレビューミュージカル舞台の台本作者として台本・音楽・舞台装置を
担当した人である。この人は、当時の大衆演劇の中に極めて高度な知性と洗練された
娯楽性を同時に持ち込んだ人であった。この人が生きていたら菊田一夫の通俗路線が
あれ程のさばることはなかったろうと言われている。」
今ではエノケンを同時代で見たという人もすくなくなりつつあるのですから、戦前に
エノケンを支えた菊谷さんのことなど忘れられて当然であります。
上に引用した山口さんの文章は、「文化と仕掛け」に収録されているものですが、今回
の著作は、その昔に発表されていて、途中でとまっていたものをまとめたようにありま
した。その文章は、どこに発表されていたものでしょうか。
「文化と仕掛け」には「エノケンと1920年代」という文章がおかれているのですが、
そこには、「このところ二十年代を知っている人が次々に世を去っていくにつけて、
これらの人々が本当の理解者を得ずして去っていっているのではないかという想いに
捉われずにいられない。といって別に私が、本当に理解していると言おうとしている
わけでは毛頭無い。一つの時代は、その時代特有の同時代感覚によって支えられて
いる。しかしながら、ある人や作品が時代を越えて次の時代の趣向に合わせて、
矮小化されるか又はまったく別のものになってしまうことが多い。」とありました。
1920年代というのは、当方の亡父が生まれたころのことであります。大正の終わり
から昭和のはじめでありました。