余韻は続く

 昨日に足を運んだ札幌大学図書館「ヘルメス」での今福龍太さんと吉増剛造さんの
対話がよかったことであります。
 会場となった「ヘルメス」は、東京府中にあった山口昌男さんが仕事をしていた居
間の雰囲気を復元したものでありまして、この場所は23歳のフリーター今福さんが、
押しかけて初対面となる山口さんに研究仲間に加えてほしいと直訴したところである
という話題から、対話は始まりました。

 長いすに今福さんがすわって、その向かいとなるところに山口さんが座り、自分か
らの話はすこしで終わり、あとはものすごい熱量をもって山口さんが語り続けたと
いいます。知らない人について語られているにもかかわらず、とても面白く、その熱っ
ぽさを読み取ろうとしたとのことです。
 これを機に今福さんはヘルメスグループの研究員として活動をすることになりです。
そういう意味で、今回「ヘルメス」と名付けられた東京府中 山口昌男さんの自宅空間
は、今福さんにとっては、自分の出発点、根源をつくってくれた場所であったことに
なります。
 こうした思い出深い場での話でありますから、当然のこと対話は吉増さんとのものに
とどまらず、ヘルメス空間に降りてくるであろう山口昌男さんを待ちながら、山口さん
との交感も想定のうちであります。
 お二人の話を聞いておりましたら(特に吉増さんなどの場合などは)、その場にいる
山口さんを相手に話をしているようにも受け取ることができました。
吉増さんは詩人ですから、山口さんについては「学問を受け継ぐより、たましいのしぐ
さを継いでいく」というというふうに語っていました。
 この対話のためには、今福さんがつくられた以下のようなふろくがありました。

 赤と青の手書き文字が今福さんによるものですが、ここから本に関わるところを引用で
す。
「『山口昌男と書物の精神』をめぐって考えるための最良の手引きとして今日みなさんに
御紹介したいのが、山口氏の痛快なエッセイ『エイゼンシュタインの知的小宇宙』です。
山口昌男コレクション』に収録されています。ご一読、再読、三読いただければ・・。」
 このふろくは、「エイゼンシュタインの知的小宇宙」から切り取った断片に、今福さん
がコメントをつけたもの。なんと貴重なノートでありましょう。
 これは読んでみなくてはいけませんです。

山口昌男コレクション (ちくま学芸文庫)

山口昌男コレクション (ちくま学芸文庫)