最近の読書から 7

 長谷川濬さんについての本がでたことから、長谷川さんと満州の話題となっています
が、これについては「彼等の昭和」という名著がありました。

彼等の昭和―長谷川海太郎・りん二郎・濬・四郎

彼等の昭和―長谷川海太郎・りん二郎・濬・四郎

 長谷川兄弟について、父から書きおこして、ひとりずつ取り上げていくのですが、
資料がわりと入手できる長男 長谷川海太郎、四男 長谷川四郎については書きやす
かったでしょうが、次男 長谷川潾二郎と三男 長谷川濬 さんについては公開され
ている資料も少なくて、たいへんであったろうと思われます。
 この本には、巻末に長谷川兄弟に関する年譜があるのですが、参考文献がまとめられ
ていましたら、もっとよかったのにです。
 長谷川濬さんが参加した文芸誌「満州浪漫」(尾崎秀樹さんの「近代文学の傷痕」の
巻末にはこの文芸誌の第1輯から3輯までの目次が掲載されています。これは基調な資
料であります。)というのは、もちろん満州国かぎりで消えるのですが、満州ではじまっ
た同人誌「作文」は、同人たちが引き上げてきてから、国内で活動が継続されていまし
た。
 長谷川濬さんが亡くなるまで拠ったのは「作文」でありまして、死後には追悼特集が
発行されています。川崎賢子さんの文章には次のようにあります。
「それでも濬は書き続けた。同人誌『作文』第96集(1974年8月)の長谷川濬追悼号
に寄せられた秋原勝二『彼と作文』からは同人費にことかく困窮のなかでも、書かずに
いられなかった濬のようすがうかがわれる。『作文』と『動物文学』、濬が最後まで
かかわったこのふたつの雑誌は、いずれも満州時代に濬が出あった雑誌だった。」
 我が家のどこかに「作文」長谷川濬追悼号があるのですが、これを機会にさがしてみ
なくてはいけません。
 ここで引用した文章で注目したのは、「作文」に寄せた秋原勝二という名前でありまし
て、この人の本が、最近に「SURE」から刊行されたのでありました。