みみずく先生 4

 由良君美さんは、「みみずく」は「わたしの斎号からきており」と「みみずく偏書記」
のあとがきに記しているのですが、「偏書記」のあとがきの締めには、「昭和58年4月
15日 春宵雨読の日  由良君美 識 」とあります。「偏書記」をぱらぱらと見る限
りでは、「斎号」の具体についての記載はないようです。
 これが「風狂 虎の巻」のあとがきの締めでは、次のようになります。
「昭和58年9月末日  休日閑居秋思之薄暮  木兎斎 識 」
みみずく先生は、木兎斎というのでありましたか。これには、もくとさいとかなが振って
ありました。
 あとがきの書き出しは、次のようになります。
「『みみずく雑纂シリーズ』第一巻のつもりで、今年四月に『みみずく偏書記』を一旦、
まとめた。つづく第二巻のつもりで、ここに『風狂虎の巻』をまとめてみようとする。」
 みみずく雑纂シリーズということでやっていくとして、第二巻の編集も青土社の高橋
順子さんでありました。
「信頼する青土社の編集ベテラン高橋順子さんの爛熟した頭脳をお願いした。その結果
風狂の思想>という仮題で一つの体裁をなすように考えてみたらと、彼女が持ってき
て下さったのが本書の中身の大半。そうか、<風狂の思想>。なかなか良い題だ。わたし
個人の一側面は、これに収まるだろうし、男の求道の普遍性も収まるだろう。でもすでに
類書が国文学書にはある。少し新鮮味に欠けるのが難だよね。・・」
 ということで、「虎の巻」ということばをあわせることになったわけです。
「今の若い人たちには<虎の巻>という、いささか古めかしい表現法さえ、かえって
なにかとても可愛らしく響くのではなかろうか。そのほうがいい。<トラ>のイメージ
のもつ、なんとなくユーモラスな味わい、それと木兎斎の<みみずく>のもつサティリ
カルな姿態とが手に手をとりあって、<風狂>という人類性の深層にひそむ、根源的
旅情のなかで握手しあおうとして互いに指を求め合っている・・・」
 なかなかわかりにくい文章でありまして、ついつい引用がながくなってしまいます。
「根源的旅情」でありますが、それはスルーして、虎とみみずくであります。
「では、行け、わたしの<虎みみずく>。そして広い世間のなかに旧友またはまだ見ぬ
友を、見つけつづけてゆくがよい。いまはただ、この<虎みみずく>を図像化してくだ
さった在西独の横尾龍彦画伯にひたすら感謝を捧げたい。」
 本の書名には、みみずくとはありませんが、虎という文字をひそませることによって
虎みみずくへと展開させています。とらみみずくで検索をしますと「とらふずく」とあ
りました。「風狂 虎の巻」では、ひっそりと横尾画伯の描く「虎みみずく」が隠れて
いるのでした。

 この「虎みみずく」は表紙カバーをはずしますと、表紙に書かれているのでした。
表紙をあけると、そこには虎がいました。