百歳までの読書術 12

 昨日に「読書名人伝」に取り上げられている人の名前を記していて、これは山口昌男
さんの「内田魯庵山脈」につながる「失われた日本人発掘」と小沢書店 長谷川郁夫さん
の「ポエティカ」特集、そして坪内祐三さんの路線などがミックスしたリストであるなと
思いましたです。
 それと同時に、狩野亨吉とか田中美知太郎、鷲巣繁男さんという人たちがはてな
キーワード登録されていないことに驚いてしまいました。(ひょっとしたら、登録され
ているのに当方の文字入力が悪くてリンクがはれないのかもしれませんが。)
 これがネットの世界でありますね。マイナーであまり知られていない人についての情報
はたくさんあるのに、かってメジャーな存在であった人については、積極的な取り上げが
ないという現実があるようです。
 特に当方が好んでいる古本系のネットは、マイナーポエットが超有名人のようにとり
扱われていたりしますからね。
 さすがにウィキペディアには3人そろっていますが、狩野亨吉さんのところでは当方
が、その存在を知ることになった小林勇さんの「隠者の焔」についての言及がなくて、
これはちょっとさびしくはないかです。

隠者の焔 (1971年)

隠者の焔 (1971年)

 脱線ついでに、小林勇さん(もちろんかっては岩波書店会長であった人)の小説につい
てですが、「隠者の焔」は、副題に「小説 狩野亨吉」とあります。文藝春秋社からでた
この元版の帯には、井上靖さんの推薦文がありました。
小林勇氏の短編集『隠者の焔』は近頃珍しい大人の文学である。氏は永年ジャーナリス
トとして接した人々を俎上に捉えて、尊敬と愛情を失うことなく、それを踏まえた上で、
書くべきことを書いたという作品である。」
 この特集において「狩野亨吉」さんの紹介者として「鈴木正」さんというのはベストで
ありましょう。この鈴木正さんについてもリンクが張られていないのが、らしいことで
あります。
 鈴木さんの紹介文から、狩野亨吉の蔵書についての考えを引用です。
「 彼は本の行く末について、苦心して蒐集した本は子孫に残すべきものではない、金が
あれば図書館を建てて公開するのが上策。それができねば図書館に寄付するのが中策。
これすらできねばまとめて廉く図書館に譲るのが下策だと語っていた。」
 雑本であれば、子どもたちは興味を示さないので蔵書は一代限りとなりますが、学者の
場合は、「二代目に引き継ぐのはラク」といわれているのにです。狩野さんは、子供
さんがいなかったのでありますが、その蔵書には、「安藤昌益の筆写本『自然真営道』」
などもあって、雑本の山とはまったく違うものでありました。
 狩野さんの蔵書は、自らに借金があったこともあり結局、東北大学に廉く引き取って
もらうことになったとのことです。