今年のことなど 7

 今年のことなどと記し始めたときには、まさかこれが黒子の編集者 伊藤英治さん
の話題になるとは思ってもいませんでした。これだから面白いというか、積ん読
やめられないであります。
 昨日に紹介したハルキ文庫は、編・解説が伊藤英治さんですが、エッセイは工藤
直子さんでした。(工藤さんは、伊藤さんがまどさんに続いてまとめるとしたら、
阪田さんと工藤さんといっている方です。)
 この解説で、伊藤さんは、阪田さんの詩について、次のようにいっています。
「阪田さんの子どもの歌や詩の底流には励ましの思いが流れているように思います。
もしかしたら阪田さんは『がしんたれ』の自分を励ますために子ども歌や詩を書いて
いるのかも知れません。しかし、今の子ども気分にぴったりなので、子どもたちは
自分自身の歌のように歌っているのではないでしょうか。
 もうひとつ、阪田さんの歌や詩の特徴は言葉にあります。作品のどれにも無駄な
言葉は一切省かれていて、最小限必要な言葉で成り立っているのに加えて、日本語が
本来持っているリズムや発音を大切にしているので、読むと心地良く感じます。」
 子どもにも読んで理解できる詩ですが、大人にとっても励ましとなるものであり、
歌われることを前提にした詩なども多いことから、リズムや発音を大切にしている
のですね。
 この伊藤さんの解説の最後のところには、阪田さんの次女 大浦みずきさんの
文章の部分が紹介されています。伊藤さんの引用しているところを再引用です。
大浦さんの文章は、「東京新聞 2003年9月26日夕刊」に掲載のものとあります。
「果たして私は父のように、血を絞り出すような仕事をしたことがあるだろうか、
・・。人に感動を与えるには、これくらい血を流さなきゃ、いや流してみたい、
そんなふうに思えた。」
 阪田さんが、うつとたたかいながら作品制作を行っていたのですが、遺作と
なった連作は「鬱の髄から天井のぞく」という題でありました。