今年のことなど 6

 児童文学の編集者 伊藤英治さんといえば、まずは「まど・みちお全詩集」(理論社
でありますが、当方はこの本は持っておりませんです。入手容易な「まど・みちお詩集」
(ハルキ文庫 98年4月刊)を持っているのみですが、これと伊藤英治さんの関わりはと
思って確認をしてみましたら、これに収録の年譜をが「伊藤英治氏の作成年譜を簡略化
して作成」とあるのみでした。
 これから6年後の2004年9月に伊藤英治さんの編集による「阪田寛夫詩集」がやはり
ハルキ文庫からでています。ハルキ文庫は、いまどき珍しく詩集をシリーズ化していま
す。内容としては、講談社文芸文庫に近くて、値段は半分以下ですから、これは凄いも
のです。ハルキさんが好きかどうかは別にして、いいものはいい。

阪田寛夫詩集 (ハルキ文庫)

阪田寛夫詩集 (ハルキ文庫)

 ハルキ文庫「阪田寛夫詩集」帯には、編・解説 伊藤英治とあります。これの目次の
あとには、編・本文校訂・写真 伊藤英治 とありますので、この時点で阪田寛夫さん
のアンソロジーを企画するとしたら、伊藤さんをはずしては考えることができなかった
ということでしょう。
 94年に伊藤さんは、理論社との打ち合わせでまどさんのあとにまとめるとしたら、
阪田さんのものとして、資料の収集作業を始めていたと思われます。それから十年で
ありますが、阪田さんは2003年10月に、絶筆となった詩稿を送ったのち、体調を崩し、
入退院を繰り返すことになっていました。
 この文庫版の阪田詩集は、病床にあった阪田さんへの応援であったのかもしれません。
これに寄せた伊藤さんの解説は、「阪田さんのこと」となっています。書き出しは、
次のようになります。
「まず最初に読者の皆さんにお断りしておかなければなりませんが、ぼくは詩の研究者
でも批評家でもありません。阪田さんを知る編集者の一人に過ぎませんから専門的なこ
とを書くことはできません。それをお許しいただきたいと思います。」
 これまでずっと黒子であった人ですから、このような書き出しとなったのかもしれま
せんが、これはへりくだりがすぎているかも知れません。まあ読みようによっては
阪田さんの作品世界を良く知る編集者と、詩の研究者や批評家の書くものにはいい意味
での違いがあると言っているとも思われます。