小沢信男著作 200

 小沢信男全句集「んの字」を話題にしています。
 これのあとがきから引用です。
「いずれまた一冊分が溜まるだろうと、おもうまもなく突然の『全句集』のお話で、人生
いつなにがおきるやら。次の句集につけるはずの『んの字』を、そこでこの『全句集』の
表題ともしました。四冊目の句集にはちがいないから。
 余白句会のお仲間の多田道太郎氏が、懇切な跋文をお寄せくださり、ご芳情に胸がふさ
がります。辻征夫氏の急逝に、句会一同衝撃のなかにいますが、おもえば私にも一番長い
句友であった。一本を氏の霊に献じます。・・
 なお収録の各句集は、原本とまったく同一にあらず、多少の変更はあります。消しても
足してもいまさらどうにもなるまいに、ついまだ生きてるもんだから。」
 全句集とはいいながら、もとの句集をそのまま収録しているわけではありません。
 これに収められているのは、次のようになります。
 ・ 東京百景  九十句    ( 初出 九十句 )
 ・ 昨日少年  五十八句   ( 初出 六十二句 )
 ・ 足の裏   百四十九句  ( 初出 百五十四句 )
 ・ んの字   五十七句   

 多田道太郎さんが「跋」を寄せていますが、その書き出しは表題作についてであります。
「  んの字に膝抱く秋のおんなかな 
 『んの字」で様になるのは日本の女で秋なんですね。夏だとアメリカの女の子みたいに
足を投げ出したくなる。横坐りとか亀の子坐りとか様ざまの坐りはあれど。『んの字』
坐りを発見したときは、さすがの小沢さんもウームと唸って膝を叩いたことでしょう。
ワープロの文字をにらんでいての発見ですか?それとも幻想の女?」
 「膝抱くおんな」は「んの字」に見えるということで、平野甲賀さんの「ん」は膝抱く
おんなに見えるかしらんです。
「膝抱くおんな」で検索をしましたら、佐藤忠良さんの作品名にあたりました。
ちょうど本日に手にした「つぶれた帽子 佐藤忠良自伝」中公文庫の194ページには、
佐藤忠良さんのリトグラフ作品「膝を抱く女」が掲載されていました。この作品に
ある女のポーズは、んの字が裏焼となっているようであります。