表紙の裏 5

 表紙の裏の小沢信男さんであります。
 昨日は「みすず」でありましたが、本日の話題は「古本倶楽部」260号の表紙裏で
あります。「古本倶楽部」は、中野書店の目録で毎月刊行されるものです。毎月
印刷された目録を送り続けるというのは、すごくお金がかかると思われるのです
が、老舗古本屋さんの意地のような仕事です。
 今回の目録は328ページで、掲載されているのは14100点となります。今回は
色紙と書簡の特集をしておりまして、1000点ほどのものがあります。色紙幅という
ところには、島崎藤村のものが315千円ででていました。色紙には小沢信男さんの
次の句を記したものがありました。
「 銀杏散る散りし昭和の命ほど 巷児 」
 ということで、「古本倶楽部」260号の表紙裏からです。
 文章を記していますのは、お店の方となります。
「 二月病五月病の派生種。二月十四日、例の製菓業界の陰謀による女子の求愛
行事に於いて、『ホンメイ』はおろか、『ギリ』と呼ばれる救済措置の恩恵にすら
預かれなかった、もっぱら男子に見られる精神的ストレス。まれに想う相手が
カップリング済みのために、求愛に及べない女子が罹患する場合もある。 
 ・・・・
  バレンタインデー樋口一葉は知らざりき  小沢信男 」 

 ここに引用されている句は、句集「足の裏」に収録されたものであります。
小沢信男さんの全句集「んの字」に再録されていて、今はこれのほうが入手は容易
でありましょう。
 句集で、樋口一葉の句の次におかれているのは、これであります。
 「 多喜二忌は歳時記に見ず啄木忌 」
 多喜二というと小林多喜二ですね。亡くなったのはいつであろうかと思って調べて
みましたら、2月20日とありました。小林多喜二が亡くなったのは2月20日でしたか。
死にいたる原因からして、歳時記にのってきそうもありませんですね。
啄木忌というのは、なんとなく歳時記にありそうです。(たぶん、あるのでしょう。)
啄木の亡くなった日は4月13日ですが、多喜二とのつながりはどうしてだろうと思い
ましたら、啄木は誕生日が2月20日でありました。
 生きているときは誕生日で、亡くなると死んだ日で記憶されるのですが2月20日
誕生日にする人には、すごい人が多いな。