小沢信男著作 111

 河出書房刊「東京百景」によせた小沢信男さんによるあとがきの、最後のくだりは
田村義也さんの装丁に関してです。
「 田村義也氏の装幀が、山本松谷えがく『新撰東京名所図会」中の数葉を放胆に
駆使してくださいました。なんと願ってもないことか。かねがね敬愛する明治の先人
の遺業にもご参加ねがっちゃって、これでたっぷり<百景>となります。」
 田村義也さんの追悼集にも小沢信男さんは、文章を寄せています。
 「田村義也 編集現場115人の回想」 田村義也追悼集刊行会
( http://www.shinjuku-shobo.co.jp/Tamura/Tamura_Shohyo.html )
「『酒文化研究』編集長の田村さんから、下町の泡盛事情をしらべろとご下命いた
だき、深川・浅草あたりの泡盛酒場や問屋をたずね歩きました。なにせ下戸の身。
知らずじまいになるあたりを、おかげさまで覗けました。
 報告原稿を提出したあと、取材した酒場の二、三をご案内したが、千束通り
『乙姫』では噂通り老女将がついに現れず、大笑いして店をでました。そんな折々の
情景が、スナップショットのように浮かびます。あれがはや十年前とは!
五年前ぐらいの感じなのに。」(刊行は2003年となります。)
 この追悼集には、アンケートが二つあります。小沢信男さんの回答は以下のように
なります。
・ あなたと田村義也さんとの最初の出会いは何ですか?
  拙著「書生と車夫の東京」作品社刊 1986年3月
・あなたのお好きな田村義也装丁本をあげてください。(三冊まで)
  鶴見俊輔 「限界芸術論」 勁草書房
  野呂重雄 「もろともにかがやく宇宙の塵」一ツ橋書房
  小沢信男 「東京百景」 河出書房 

 この追悼集には、小沢信男さんの「書生と車夫の東京」を編集した増子信一さん
と福島紀幸さんのお二人も小文を寄せておられますが、前にもふれていますが、
「書生と車夫の東京」を田村さんに依頼したのは、増子さんの発案でありました。