小沢信男著作 31

「東京の人へ送る恋文」という本のなりたちについて、この本のあとがきから
引用をいたします。
「第一創作集『わが忘れなば』が、晶文社から刊行されたのが1965年。以来
ちょうど十年の星霜のうちに、さしも非流行の拙著もついに売り切れた。
そこでちかごろ、それが読みたいというありがたい読者が、日本中に暗夜の星
ぐらいにはおられるらしいのだけれども、とっくに絶版だから手に入らないの
です。
 さりとて復刻するほどの”幻の名著”でもなし、どうしたものかと気をもんで
いたところ、さいわい晶文社さんが、なんとかしてあげようと言ってくださった。
そこで、旧著と新稿を取捨案配して、あらたに一冊つくることになり、その厄介
な編集の一切を、津野海太郎氏が引き受けてくれました。
 そしてできたのが本書です。
 第一創作集に収録の、短編小説十一篇のうち五篇が本書に入っております。
分量からいってもちょうど半分です。それから私が過去二十余年間に書き溜めた、
かなりたくさんの雑文のなかから、十数篇が抜きだされております。
言ってしまえば、<小説と雑文抄>ということになるが、この選り分けと配列は、
編者の仕業なのです。」
 このあとにも、編者 津野海太郎さんへの感謝のことばが、つづくのですが、
それはまた明日に。