ジャケ買い 3

 「装丁問答」の著者 長友啓典さんは1939年生まれでありますからして、当方
よりも一回り上のウサギさんではないですか。
 この本のもとになった連載が「一冊の本」ではじまったのが、2006年のことであり
ますからして、60代の半ばになっていて、その感覚のお若いことに驚きばかりです。
 レコードにおけるジャケ買いと同様のことが、本の世界でもいえると説いています。
「ジャケットの良いものは本盤の内容もすばらしいということだ。それはそうだ、
デザイナーは楽曲を幾度となく聞き込んで自ら音楽家とセッションするようにデザイン
するのだから間違いない。
 そのレコードジャケットがご存知のように衰退し、書籍にとって変わった。レコード
ジャケットで得た経験を書籍に移しかえて見てみれば分かり易い。『これだ』と思った
装丁本を購入して内容のつまらないものに出くわしたことがない、というのもその
ひとつだ。本屋さんを徘徊する心持ちよさはここにある。素晴らしい装丁の本に
出会った時である。」
 この新書には、70冊ほどの本がとりあげられていますが、当方が購入したものは、
わずかに2冊、ほとんどは手にしたことさえないということになります。
このリストを参考に、これにある装丁家による本でも購入してみましょうか。
 たとえば、長友さんが次のように記しているものどうでしょう。
「カバーの題字、表紙の絵、見返しの模様、扉の文字と続くすさまじい迫力は、この
小説にはこの装丁しかないだろうと思われるものだ。装丁図版は、大正時代に作られ
た『根津権現裏』で装幀・広川松五郎、題字・高村光太郎とある。装丁の題字も藤澤
清造の集字とある。どこまでもこだわりを見せている。」

どうで死ぬ身の一踊り

どうで死ぬ身の一踊り

 著者 西村賢太さんは、今回の芥川賞を受けて、そのインタビューで賞金で「藤澤
清造」全集を刊行するといってました。数年前に全集見本がでて話題となったものが、
ついに刊行されるのでありましょうか。