今年の文化功労者 2

 今年の文化功労者で取り上げる、もうひとかたは近世文学の中野三敏さんであります。
 ちょうど、今月の「図書」11月号で三十回続いていた「和本教室」は最終回をむかえ
ました。当方は近世文学には、まったくなじみがないのでありますが、中野さんのこの
連載で和本についてのことを、すこし知ることができました。(過去に、何度かこれ
から話題をいただきました。)
 最終回の書き出しは、次のようになります。
「 思い出していただきたいことがある。本誌の表紙に和本の書影が用いられたことが
かってあっただろうか。少なくとも私の記憶の中にはない。それは敢えていえば、近代
日本の教養と知識の根底が西洋文明に根ざすことによって成り立っているという、
ささやかな証明ではなかろうか。
 拙稿は、本誌読者の、忘れられた和本への関心を、いささかでも取り戻したい願望に
基づくものであった。」
 「図書」の表紙に和本の書影というのは、実際のところどうなのでしょうか。当方は
高校時代くらいから岩波書店の「図書」を定期購読しているのですが、そういえば、和本
についての書影が表紙を飾ったというのは、記憶に残っていません。関心が薄いので忘れ
ているのかも知れません。
 中野さんが問題にしているのは、われわれの明治以前の「くずし字」の読解能力の低さ
であります。それは、欧米の国と比較するとよくわかるとあります。
「 小学生といえば、十八世紀の独立宣言を読めないアメリカの小学生はおそらくいない
はずである。翻って我国の大人で、明治四年の福沢の『学問のすすめ』を活字本に頼らず
に読める人が、0.00004%という現状は、何としても是正されるべき事柄ではないだろうか。」