本日は岩波「図書」3月号が届きました。
今回の「図書」では、北海道につながるところに目がいきました。
一つは斎藤美奈子さんの「文庫解説を読む」でありますが、今回は北海道出身の作家
渡辺淳一さんの作品の文庫解説となります。残念ながら、当方は渡辺淳一さんの作品
は読んだことがありませんで、本も持っていないのですが、斎藤美奈子さんは、果敢
にも「化身」「失楽園」「愛の流刑地」の三冊にしぼって取り上げています。
日経朝刊に連載されたものですが、日本のサラリーマンは、朝からこのような小説を
読んでいるのかといわれたように記憶しています。
斎藤さんは、このような渡辺さんの路線を「よくいえばリーダブル、悪くいえばス
カスカ。だからこそ渡辺文学は娯楽小説として優れているのだともいえる半面、これ
が論評の対象になるかというと、なかなか難しい。」と記しています。
文庫になるたび、これらの作品には解説がつくのですが、それを読み解くのが、今
回のテーマですが、「社交としての解説に注意すべし」というのがタイトルとなって
います。渡辺さんの文庫の解説には、批評性とかはなくて、社交としての側面が勝っ
ているということになるのですが、それは斎藤さんの文章を見てのお楽しみ。
もうひとつは、池澤夏樹さんの「詩のなぐさめ」でありまして、今回は「川上澄生
の詩と人生」というタイトルです。
書き出しからは次のようになっています。
「古本屋は危険だからなるべく入らないようにしている。・・
しかし、店頭の『100円均一』の棚くらいは見てもいだろう。そう思ってなじみの
札幌は並樹書房の前で足を止めたところで目を引くものがあった。
『川上澄生全詩集』中公文庫版の全集の第14巻。これが百円とはありがたい。という
か店頭に出しておいてくれたところがありがたい。」
池澤さんは、これを買って、家へと帰ってから早速読んでみたとありますので、今
は札幌にお住まいのようです。
池澤さんが川上澄生さんに言及すると、その先にあるのは福永武彦さんの「ある青
春」でありまして、そのとおりの展開となっています。
当方が偏愛する福永武彦さんの「枕頭の書」に、福永さんが詩集「ある青春」を刊
行しようとして、川上澄生さんに表紙絵などをねだった話がでてきますが、当方の
大変好きなエピソードで、すでにこれは拙ブログで紹介をしていると思っていました
が、どうもそうではなかったようです。
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が、川上澄生さんの年譜によれば、次のようになります。(「東京文化財研究所」の
ものを引用ですが、二つ地名の字にあやまりがありましたので、それは訂正です。)
昭和20年 3月、北海道胆振国勇払郡安平村追分の妻の実家へ疎開、
4月 次女さやか誕生。
6月 白老郡に転居。
8月、北海道庁立苫小牧中学校嘱託となる。
『明治調』(はがき版5葉)。
昭和21年 第20回図展:「いんへるの」「西洋骨牌」。
『ゑげれすいろは』(富岳本社)、『兔と山猫の話』(柏書店)
昭和22年 国展:「にかるの王伝」。
『あいのもしり』(憲法記念展出品)、『えぞかしま』
『にかるの王伝』、『瓜姫』、『長崎大寿楼』、
『横浜どんたく』(日本愛書会)、『二人連』。
昭和23年 国展:「ぱんとにんふ」。12月、教え子たちの招請により
宇都宮へ帰る。
川上さんが「苫小牧にいる」というのは、以上のようなことでありまして、お住
まいは、苫小牧に隣接する追分と白老で、勤務していたのが苫小牧となります。
このへん、こだわる人はこだわるのでありますよね。