岩波少年文庫創刊60年 2

 最近は、あまり古本屋へといくことがなくなっていますが、いまから十年前くらい
には、岩波少年文庫の最初の装幀本が安い値段で購入可能でした。一番最初は箱入りで、
表紙も厚紙に紙が貼られていました。
 外箱はありませんが、表紙は以下のデザインでありました。

 この本は、ずっと後になってから求めたものでありますが、奥付は昭和31年11月と
なっています。これはシリーズの123番となります。定価は180円となっています
ので、これは当時の岩波新書より高価です。少年文庫は1950年の創刊ですから、
スタートして6年後ですか。1956年であっても、戦争が終わったのは、ちょっと前の
ことという感じであったでしょう。
 少年文庫の版型は、この当初のものから、新書サイズに近いものになって、いままた
当初のものと同じサイズに本家帰りしています。この少年文庫の最終ページには、
「少年文庫発刊に際して」という文章が掲載されています。これはどなたが書いたもので
ありましょう。全文を引用したいところですが、まずは冒頭のところを記してみることと
いたしましょう。
「一物も残さず焼きはらわれた街に、草が萌え出し、いためつけられた街路樹からも、
若々しい枝が空にむかって伸びていった。戦後、いたるところに見た草木の、あのめざま
しい姿は、私たちに、いま何を大切にし、何に期待すべきかを教える。未曾有の崩壊を
経て、まだ立ちなおらない今日の日本に、少年期を過ごしつつある人々こそ、私たちの
社会にとって、正にあのみずみずしい草の葉であり、若々しい枝なのである。
 この文庫は、日本のこの新しい萌芽に対する深い期待から生まれた。この萌芽に明るい
陽光をさし入れ、豊かな水分を培うことが、この文庫の目的である。」