本日の拾い読み 5

 丸谷才一さんの「文学のレッスン」を拾い読みしているうちに平凡社から刊行され
た「世界教養全集」に話題が転じてしまっていますが、本日はちょっぴり話しを戻し
て、篠田一士さんが、おう外「空車」を「純粋散文」といっているところなどを見て
みることにいたしましょう。
 当方は、篠田一士さんに恩を感じていると、これまでも数回記しているはずであり
ますが、それは優れたアンソロジーの編者としてであったり、推薦している図書が
とてもこちらの好みにあったりしたからであります。
アンソロジーとしては、世界教養全集の「東西文芸論集」というのは、取り組んだ
ものとしてもっとも初期の一冊ではないでしょうか。このあとに集英社からでた
「世界の文学」の「文芸批評集」が話題になりました。平凡社からでた「現代人の
思想」の一冊となる「伝統と現代」もよかったですね。
 この「東西文芸論集」の編集にあたっての方針は、次のとおりです。編者は中野
好夫と篠田一士となっていますが、もちろん、篠田の仕事で、解説も篠田が書いて
います。
「 ここに収めた三九篇のエッセイは、一応『東西文芸論集』という題名の下に、
集められているが、もとより、東西の文芸論の代表作を漫然とあさったものでは
ない。第一、そういう代表作をえらぶとしれば、とてもこのささやかな一冊に収ま
るものでないし、また、その種のアンソロジーをつくったとしても、一般読者の
用には供されない。それに、ここに収めたエッセイは、ヨーロッパの場合でいえば、
十九世紀以後、つまり狭義の近代文学に属するものに限られており、日本について
は、明治以前の作品は思いきって削除してある。」
 三九篇のエッセイ(批評ではなくエッセイです)は、文学、批評、小説、日本、
ヨーロッパ、詩の6つのカテゴリーに分けられています。
ヨーロッパというカテゴリーに収められているエッセイは五編は、次のものです。
 シュノンソーの離宮   中村光夫
 パリ 十九世紀の首都  ベンヤミン   川村二郎訳
 精神の危機       ヴァレリ−   桑原武夫
 ヨーロッパ文学     クルティウス  川村二郎訳
 変形譚         花田清輝

 この次は、詩の四篇
 シェイクスピア     ジョンソン   吉田健一
 茂吉ノート       中野重治
 詩語としての日本語   釈 迢空
 韻文は滅びゆく技法か  ウィルソン   高松雄一