湯川共和国4

 湯川成一さんのお誕生日にあわせて刊行された「私の本作り」に寄せた画家 岡田
露愁さんの文章に次のようなくだりがありました。
「 湯川さんの訃報を福永さんからお聞きしたときは呆然とした。湯川さんの病状は
そんなに重たかったのか。私は最後まで湯川さんに自分勝手を聞いてもらっていたの
か。・・湯川さんはどうしてもう少し生きてくれなかったのだ。
『あなたの最後の本はぼくの手で創るはずだった』・・・
 それからしばらくして柄澤さんから便りをもらった。
『湯川さんゆかりの作家で本を創りませんか』
 柄澤さんとは昔に一度食事をしたことがあり、湯川さんも同席されていた。
 この本には、あと望月くんと戸田さんが一緒だと言うことだった。この本のことで、
文章で加わる詩人の時里さんにも会った、不思議なことに誰も初めて会った気が
しない。なにか暫くあわなかった友にあったようだった。」

 湯川共和国は、その名のとおり共和制でありますから、絶対君主は存在しないのであ
りますが、共和国の指導者が控えめな性格であるせいか、集う人々も温和な方が
多かったようです。「不思議なことに誰も初めて会った気がしない。」というのは、
3月20日にギャラリー会場に足を踏み入れて、そのあとに開催された「偲ぶ集い」に
参加した当方も強く感じたことです。本を書く人たちがそう感じただけでなく、本を
読む人たちも互いにそのことを感じていたに違いありません。