杉浦康平のデザイン9

 杉浦康平デザインで、黒シリーズといえば、埴谷雄高とか稲垣足穂でありますね。
埴谷のものでは、昨日の河出版作品集がインパクトがありましたが、どこからでたもの
であったか埴谷の頭部CTの写真を表紙のつかったものもありました。
埴谷の本は、デザイン的に面白くて、書店で手に取ってながめたことはあるのですが、
ほとんど購入することがないので写真をかかげることができないのが残念であります。
 臼田さんの新書本では、75年に工作舎から刊行された「人間人形時代」がカラー口絵
とあわせて大きく取り上げられています。工作舎は、松岡正剛がおこした会社ですが、
「遊」という雑誌をだしてやっと世にでたところです。この「遊」はカラーの表紙です
が、「人間人形時代」はモノトーンに近いものです。
これについて、臼田さんは、次のように記しています。
「 黒い本の系譜の、色彩をむやみに使わないストイシズムが生む深く沈むような空気
感は、画家の装画を四色の色分解でとりいれるような通常の文芸書装幀のあり方や、
カラーテレビの普及に象徴されるようなカラー万能時代への批判的営為でもあるだろ
う。・・・
印刷技術面においても、<黒い本>の可能性をとことん突き詰めていることは、黒色に
固有の神秘性すら漂う仕立てが証している。」