晶文社図書目録3

 晶文社の古い図書目録(70年5月)の冒頭には、全集、著作集が掲載されている
のでありますが、この時点で刊行となっているのは、次のものでした。
・ 島尾敏雄作品集        全五巻(61年〜67年)
・ 長谷川四郎作品集       全四巻(66年〜69年)
・ ポール・ニザン著作集     全九巻 別巻二(66年〜75年)
・ アーノルド・ウェスカー全作品 全三巻
・ ヴァルター・ベンヤミン著作集 全十五巻
・ チェーザレパヴェーゼ全集  全十七巻

 このうちで一番最初に刊行が始まったのは島尾敏雄作品集であるようです。61年から
67年にかけて刊行され、78年の図書目録にも新刊で入手可能とあります。(このあと、
80年から島尾敏雄全集 全17巻がでるのですが、90年の図書目録には作品集 全五巻の
うち第一巻のみ品切れとあります。30年ほどもかけて、なんとまだ在庫があるという
ことです。それでいて、新しい全集を出すというのがすごいこと。)
ポール・ニザンは66年から75年の刊行で全巻完結とありました。これはすべて売り
切ったようであります。
 チェーザレパヴェーゼ全集 全十七巻は、なかなか壮大な企画でありましたが、
これは半分まで刊行できたのでしょうか。最近は、岩波からでているチェーザレ
パヴェーゼ作品でありますが、元々はこのシリーズのために翻訳がはじまったものも
ありますでしょう。
 ヴァルター・ベンヤミン著作集 全十五巻は、全巻完結したのですが、まだ在庫は
ありでしょうか。
 そして長谷川四郎作品集 全四巻であります。これは晶文社代表の中村勝哉さんの
旧制中学の先輩のものでありますから、どうしても出したかったのでしょう。
長谷川四郎さんには、この作品集をだした時点で、晶文社から刊行したものはありま
せんでした。長谷川四郎さんは、地味で人気ある作家ではなかったのでセールスは
相当に大変であったようですが、なんとか10年ほどで全巻完売となったようです。
 70年の目録には、長谷川四郎作品集の紹介文は、次のようであります。
「 現代日本文学の静かなる水先案内人である長谷川四郎の、みずみずしいインター
ナショナルな眼がとらえた世界 新しい芸術精神と未知の冒険にみちみちた作品群を
初めて集大成。ますます声価たかまる鬼才の、小説、詩、翻訳の脚本など多様な
ジャンルにわたる活動を一望に収めた決定版。
 第一巻 鶴 シベリア物語などの初期名作を作者みずから再編集した連作小説集
 第二巻 阿久正の話 遠近法など、戦後の日常と戦争体験の深部での出会いを描く
     実験小説集。
 第三巻 三つの話 ベルリン1960 目下旧聞篇などユニークな記録者の視点と幻想
     的なパロディの接点をしめす諸篇
 第四巻 詩 訳詩 作家論などを収録  」
 
 76年に長谷川四郎全集の刊行がはじまるまで、四郎作品がまとまっているのは、
この四巻本のみでありまして、そこそこ入手困難なものとなっておりました。