晶文社図書目録2

目録

 本日の写真は、晶文社図書目録がA5サイズになってからの
ものです。
毎年表紙の色と発行年を変えていますが、手元には10年分くらい
ありました。61年から出版を開始した晶文社の最初の目録が
何年で、いつからA5サイズとなったものであるのか、まるで
わかっておりません。
岩波文庫目録を収集している人はいると聞いていますが、晶文社にも熱心な
コレクターがいて、目録もほとんどもっているなんて人はいるのでしょうか。
 A5サイズになってからは、巻末に品切図書一覧がつくようになりました。
ある意味、図書目録でありがたいのは品切リストであります。その昔の筑摩
書房の目録には品切一覧がありましたが、あれは相当に大変な作業であるようで、
筑摩の場合はいつの間にかなくなっていました。
図書目録を出していないなんて出版社もありますが、最近はネット上で在庫は
確認することができるようになっていて、これが主流になって、逆に印刷の
図書目録が姿を消しているのかもしれません。
 78年晶文社図書目録にある品切図書一覧を見てみましょう。刊行年順に
なっていました。
 61年 理智と情念 上     寺田透
    抒情の批判       大岡信

 63年 芸術と伝統       大岡信
    戦時戦後の先行者たち  本多秋五
    創造運動の論理     武井昭夫
 
 64年 ウェスカー全作品一   (木村光一訳)
    ものみな歌でおわる   花田清輝
    日本の職業       坂本藤良 

 65年 抒情の変革       長田弘
    ジャンケンポン協定   佐木隆三
    わが忘れなば      小沢信男
 
 66年 長谷川四郎作品集一
    長谷川四郎作品集二

 まだまだ続きますが、小沢信男さんと長谷川四郎さんの名前が登場しました
ので、以下は略です。  
 これを見て、一番不思議に思うのは、この品切一覧に処女出版物の「理智と
情念」下がないことであります。この本については、小野二郎さんの追悼文集
「大きな顔」にある晶文社創業者 中村勝哉さんの文章を引用しましょう。
「寺田先生は駒場時代の二人の恩師である。私も二高時代から文芸雑誌で先生の
書かれたものを愛読していたが、小野ときたら、長い間、その文章に先生の文体
の影響が感じられる程であった。・・・
『作家論集 理智と情念』上下巻は、先生と小野と私と三人で相談して、『下』
から出されることになった。『下』の方が、『上』より内容的に売れそうだと
思ったからである。配本日は昭和36年4月18日であった。その数日前に見本を
取次にもって行ったら、『上』のときどうしてもって来なかったのかと文句を
言われた。いや、『下』から出したんだと答えたら、目を丸くして『そんな馬鹿
な!』と言ったきり一瞬絶句したのを見て、初めて私はハッとした。小説とちが
って『上』から読む必要はまったくないのだが、『上』『下』となっていれば、
『下』から先に買う読者はまずいないだろう。」
 このせいかどうか、78年に『上』はめでたく品切となっているのですが、
『下」はまだ450円という値段で新刊で流通しているのでした。これが処女出版
でありますので、実に18年もかかってまだ残っているということでして、それが
上記の中村さんの文章となっているのでしょうか。