蒙古民族統一運動2

 本日の朝日新聞読書欄で柄谷行人さんが「ノモンハン戦争 モンゴルと満州国」を
とりあげていました。この書評の最後のところは、「本書を読んだあと、モンゴル
出身の力士たちを見ると、感慨を覚える。」とありましたが、モンゴル出身力士の
外見のみを見ますと、どちらが日本人であるかと思う事で、日本人にとっても
「モンゴリヤがわれらが故郷」となるのでありましょう。

ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書)

ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国 (岩波新書)

 先月に「中公新書の森」という話題をつづっているときに、田中克彦さんの「草原の
革命家たち」を「思い出の中公新書」アンケートで回答している人がないことは不思議
と感想を記したのですが、小生のモンゴルへの関心は、田中克彦さんとこの著作による
ものであります。モンゴルについての著作を発表している人としては、司馬遼太郎
椎名誠などありますが、当方にとっては、田中克彦さんとこの中公新書であります。
 この「草原の革命家たち」の書き出しとなる「序章 社会主義革命は民族を解放する
か」には、田中さんのモンゴル国に関するほとんどのテーマが盛り込まれています。
「 北はソ連、東西と南の三方は中国によって密封された位置に、モンゴル人民共和国
という国がある。これがモンゴル族の所有する唯一の独立国家である。モンゴル人民
共和国の国境のすぐ外には、ほとんど同じ言語と同じ文化をもつかれらの同胞が隣
あって住んでいて、南の同胞は、中華人民共和国内蒙古自治区をその居住地域として
いる。北に連なるモンゴル人は、ソ連邦の中で、ブリヤート自治社会主義共和国をあて
がわれている。こうして、モンゴル所属の居住地域全体は、北はソ連領、南は中国領に
分断され、中間部だけが独立国となっている。・・・・
 言うまでもなく中国もソ連も、それぞれ漢族と大ロシア族を主体としながら、他民族
によって構成されているのを特色とする。これら二つの多民族社会主義国家は、いずれ
も清国と帝政ロシアによる、異民族や少数民族の制服と植民政策の遺産に、その多民族
の基礎をもっている。ロシアと中国の革命の過程で、非圧迫民族の解放は、かれらに
国家的独立を与えるという結果をもって完成はしなかった。この二つの大国の革命は、
民族の立場にたって言うならば、ついに一つの独立民族国家をも産むことなく終わった
傲慢この上もないものであった。」
 この著作は、1973年(昭和48年)に刊行されたものでありますが、その後、ソ連邦
は崩壊し、その過程で「独立民族国家」は産まれたといっていいのでしょうか。非圧迫
民族問題は、ロシアにとっても、中国にとってものどに刺さった小骨どころではあり
ません。