手紙が語る戦争5

「手紙が語る戦争」みずのわ書店を手にしていましたら、次のような記述があり
ました。
「手で書いた文字からは、綴った本人の息づかいが聞こえてくるような思いが
した。文字には魂がこもっている。そんな気持ちになったことを、今でも
よく覚えている。今回も残された葉書を手にとることにより、資料の持つ力の
大きさを改めて認識した。さらにいえば、このたびは日記と手紙をからめて
書かせていただき、それによって多くを学ぶことができた。複数資料がある
のはありがたいことである。これもひとえに『書く力』のおかげであろう。」
 
 戦時下の「日記と手紙」がともに残っているというのは、それだけでも
珍しいことなのでしょう。東京とか大阪では空襲にあって消失してしまったと
いうこともあるでしょうし、自分が生きているうちに廃棄してしまったという
例もあるようです。公開を前提にした日記をつけているのであればともかくと
して、普通でありましたら、ほかの人に見せることなどは考えませんので、
けっして読みやすいものではありません。

 作家の野口富士男さんの息子さんが、仕事を退職してから大学院にはいって
そこでの研究を続けていたのですが、退職後に自分に課した課題が父親が残した
日記を整理するというものがありまして、これをやるために研究を中断して
毎日10時間以上もパソコンにむかって打ち込み作業を2年以上も続けてやっと
99%くらいの整理ができたのですが、そのあとにも日記を綴ってあったノートが
でてきたということです。
 この場合は、記しているのが作家ですから例外ですが、日記もこのくらいに
なりますと、この著者のような勤勉な息子さんをもたなくては、とっても整理が
できないことであります。(打ち込みした文書は、新書にしたら40冊分くらいも
あるとのことです。)
 アマチュアが資料を整理するとしたら、あまり量が多くてはうまくいかないようで
あります。早くに亡くなって密度の濃い人生を過ごしたかたの資料はインパクトが
強いせいもあって、アマチュアには向いた領域なののでしょう。