湯川書房 湯川成一の仕事7

湯川書房の限定本は高価でありまして、本は好きだが読むことさえできれば、
文庫本でもかまわないという小生には縁遠い世界でありました。
ハードカバーの元版を購入して積んだまま未読となっているうちに、文庫化されて
結局は文庫になってやっと読む事ができたなんてことは、珍しいことではありません。
年を重ねるに従って、本とのつきあい方がかわってくるものでして、それは懐具合の
こともありますが、それ以上に大きいのは加齢のためにいわゆる老眼となって、小さな
活字がいっぱいつまっている本を読んだりすることが困難になるのでした。
以前でしたら、長編小説というと二段組み活字がいっぱいでページが真っ黒になって
いるものでも読めたのに、若いときのように長編を読んだりすることができるので
しょうか。
 昔にでていた筑摩書房の文学全集なんてのは三段組でしたが、いまではよほどの
本好きでなくては、手にする事もないでしょうね。こうした三段組の文学全集の対極に
あるのが限定本ですね。限定本で刊行されるものにも長編小説はありますが、こった
本のつくりをするためには、長編小説というのはボリュームがありすぎて、できない
ことはないものの、コストもかかりすぎるようです。
 長編小説で単行本ででたものを、そのあと革装などにかえて部数を限定して販売する
ことがありますが、これは部数は限定でありますが、限定本ではありませんですね。
 さて、小生が手にすることができた湯川書房限定本は、以下の2冊であります。

 加賀乙彦「雨の庭」限定130部 240ミリ×170ミリ  1972.7.10
 かど角革ひら和紙装 和紙装差込函 本文黒谷楮生漉耳付 著者サイン入り

 湯川書房の限定本は、オリジナルの版画などがついているものが多く、そうした
ものは、版画のせいもあって、とても高価でありますが、「雨の庭」は、短編小説が
三作品収められているだけであります。(収録作品は、「雨の庭」「蚤」「象」)
 表題作は、09年1月に実施された大学入試センター試験の国語の問題に採用され
ました。 

 岩城宏之「屋上の牡牛」限定160部 200ミリ×125ミリ 総革装 
 丸背3段マウント仕立 本文レンケルレイド紙 天金  函染め 望月通陽
 印刷 創文社 製本 須川製本  1985.2.28

 こちらは総革装本となりますが、函の布には望月通陽さんのデザインが施されて
いますが、これをみますと、現在の光文社古典翻訳文庫の表紙絵に、まっすぐ
つながっていまして、25年も前のものとは思えないことです。