精神の風通しのために4

 塔晶夫さんとは、もちろん中井英夫さんのペンネームであります。日高普さんが
見抜いたように、塔晶夫というペンネームは、最初の「虚無への供物」出版時に
限られています。そうした意味からは、塔晶夫さんは1作しか作品を発表していない
ということになっています。
 この小説が、中井英夫さんの作品ということになったのは、69年に三一書房から
中井英夫作品集」がでたことによります。できれば、最後まで塔晶夫ということで
貫いてもらいたかったことです。このあとは、ずっと中井英夫作品として、版を
重ねるのですが、つい何年かまえに、塔晶夫版の「虚無への供物」が刊行されました。
オリジナルとは、ちがった装幀であったようですが、どうせ入手するなら、オリジナル
で、これをうんと安い値段で確保されれば、小生は泣いて喜ぶのでありまする。