「本の雑誌」6月号

 先日に「本の雑誌」が届いておりました。早速になかをぱらぱらとのぞいてみるこ
ととしました。最近は、この雑誌を手にしますと、なにかブログで話題にできるもの
はないかと、読み方が極めて不純になっています。
 ということからいえば、特集に話題を求めるのが一番ですが、今月の「そこに山の
本があるからさ」という「山の本」の特集には、ほとんどなじみがないので、これは
パス。
 それじゃと思ってさらに見ていたら、入江敦彦さんの「読む京都」という連載ペー
ジに、次のようなところがありました。
「ここまで同志社でミステリ作家が勃興した最大の理由は講談社編集者だった、故・
宇山日出臣の存在が大きい。80年代後半から、島田荘司を擁し、東京創元社の戸川
安宣とともに新本格ブームの仕掛け人となった人物である。
 同志社大学を卒業後、三井物産に入社するも『中井英夫の「虚無への供物」を文庫
化したい!』と熱望し、講談社に途中入社したという、ちょっと胸熱なエピソードが
ある。」
 当方はミステリの世界は暗いので、新本格ブームというのには無縁でありました。
それでも創元社戸川安宣さんの名前は知っていて、その方と並び称される人である
とは、しかもその人が中井英夫さんの「虚無への供物」文庫化への推進者であったと
はです。wiki宇山日出臣を検索してみましたら、ちゃんとこれがありまして1944年
お生まれとありました。大学を卒業し、就職して2年たってから講談社へと転職です
から、この宇山さんが最初に読んだ「虚無への供物」は、最初の「塔晶夫」名義のも
のであるのか、それとも三一書房からの「作品集」収録のものであるのか気になると
ころであります。
 塔晶夫版「虚無への供物」は講談社から1964年に刊行されたのですから、熱心な
ミステリファンでありましたら、その時に購入して読んでいたとしても不思議でも
なんでもありません。その後、この本は入手困難となっていて幻となっていたのです
が、どういうわけか三一書房が、69年に「作品集」として、当方も読む事ができるよ
うになったものです。
 「虚無への供物」読者の第一期生は講談社塔晶夫版」を読んだ人で、第二期生は
当方のように三一書房「作品集」ではまった人であります。それで第三期生というと
講談社文庫版で読んだ方でしょう。
 第三期生は講談社編集者 宇山日出臣さんに感謝しなくてはいけませんです。
 とここで、また入江敦彦さんの文章に戻ります。今月の最後のくだりからです。
「わたしも『虚無への供物』がなかったら、もの書きになっていなかったから一面識
もないのだけれども間接的に宇山のお世話になったといえよう。手元の奥付を見ると
1974年6月20日で第二刷とある。ちなみに分冊になった新装版は、あんなものは『虚
無への供物』ではない。宇山日出臣の魂がこもったオリジナルを入手されたい。」
 当方は「虚無への供物」の刊本は、そこそこ購入していますので、新装版の文庫も
購入済でありますが、読んだのは元の文庫本まででありました。そういえば、オリジ
ナルの文庫本は、安く見つかるたびに購入して、人にあげたりしていましたが、それ
でもまだ手元に何冊か残っていたはずです。