打ちのめされるようなすごい本2

 昨日につづいて米原万里さんの「全書評集」から題材をいただきます。
この書評集は巻末に「署名索引」と「著者名索引」があるのですが、このような
書評集というのは、頭からがぶっと読んでいくものではありませんので、索引は
とっても便利なことです。
 著者名をみてみたら、ひいきにしているひとが頻出するようで、一番多い一人が
丸谷才一さんでありました。うちのめされるようなすごい小説ということで、
丸谷さんの「笹まくら」をあげているのですから、つき合いはずいぶんと古いので
ありましょう。 
 若手で多く登場するのは誰かなと思ってみてましたら、これが斎藤美奈子さんで
ありました。米原さんは、このひとのことをかっていたのだということが良く
伝わってきます。
 「趣味は読書」平凡社に関しての書評には、次のようにあります。

「 本の悪口を書かせて、これほど面白い人は空前。ちまたに辛口評は少なくないが、
どうも後味が悪い。男性辛口評論家に多いのは、ほめる本けなす本の選び方の背後に
政治的思惑が見えすぎてしまうタイプ。女性辛口評論家に多いのは、好悪の感情丸出しで
説得力に欠けるタイプ。これではけなされている本よりけなしている評論家のほうを
嫌いになってしまう。
 その点、斎藤は、どの本にもどの著者にも等距離で遠慮思一切なし。文体は陽気に
乾いていて悪口にも芸がある。」

 男性辛口評論家とか、女性辛口評論家とみると、ついついあの人のことであるかなと
思ってしまいます。
 それにしても、人の悪口をいって後味が悪くしないためには、相当な芸を必要と
するようで、「本の悪口」を書く人は、もうすこしこうした芸を学んでほしいと
思うことです。
 そういえば、以前の本に「本を読むのは好き、悪口をいうのはもっと好き」なんて
いうのがなかったでしょうか。