マリ・クレール 2

 「マリ・クレール」87年9月号の特集は「文庫本の饗宴」でありますが、
これには「いい女になるための読書大特集」とそえられていました。これは
女性向け雑誌でありますから、そうあるのでして、ジャンル別文庫本をセレクト
した選者が、女性のみを対象としていないのはあきらかでありました。
 この時代に小生は30代なかばでありましたが、「マリ・クレール」を購入
するのに抵抗はまったくありませんでした。
 この9月号には、ノン・ジャンルというところがありまして、これの担当は
「文学鶴亀」の武藤康史さんであります。このリストとコメントは、いま再読して
も貴重に思います。この特集は翌88年に角川文庫で「活字中毒養成ギプス」と
いうタイトルで刊行されています。ぼくらはカルチャー探偵団が編集したとなって
いました。角川文庫ですから、そこそこ入手はできるのでしょうが、せっかくで
ありますから、ここで武藤さんがあげている書名を記しておくことにしましょう。
(文庫本には武藤さんの紹介文がありまして、それには「学生時代に手書き
コピーホチキス止めの映画・文学同人誌『キップル』を畑中佳樹、斉藤英治の
二人とはじめた。近く某社より商業誌として再出発の予定。」とありました。
このとき、武藤さんは弱冠30歳であります。)

・ 草野進  「世紀末プロ野球」 角川文庫
・ 山田宏一 「シネブラボー 」 ケイブンシャ文庫
・ 淀川長治 「私の映画教室 」 新潮文庫
・ 福田恒存 「私の國語教室 」 中公文庫
・ リットン・ストレイチイ 「ヴィクトリア女王冨山房百科文庫
・ 蒲松齢  「りょうさいしい」 角川文庫
・ グリーン編「アーサー王物語」 岩波少年文庫
・ 谷崎潤一郎源氏物語   」 中公文庫
・ 平川祐弘 「ルネサンスの詩」 講談社学術文庫
・ 大野雑草子「愛の詩歌   」 集英社文庫コバルトシリーズ
・ 青江舜二郎「竜の星座   」 中公文庫
・ 牧野伸顕 「回顧録    」 中公文庫
・ 金田一春彦「ことばの歳時記」 新潮文庫
・ バアネット「小公子    」 岩波文庫 (若松賤子訳)
・ 成島柳北 「柳橋新誌   」 勉誠社文庫
・ 蓮実重彦 「表層批評宣言 」 ちくま文庫
・ 林春隆  「野菜百珍   」 中公文庫
・ 西部すすむ「蜃気楼の中へ 」 中公文庫
・ 平山三郎 「百鬼園の手紙 」 旺文社文庫
・ 幸田弘子語り「落葉の隣り 」 新潮社カセットブック
・ 中沢けい 「女ともだち  」 河出文庫
・ 田中康夫 「感覚の倫理学 」 角川文庫
・ 飯沢匡  「ブーフーウー 」 フォア文庫
・ 鈴木・三編「中世なぞなぞ集」 岩波文庫
・ ナボコフ 「ベンドシニスターサンリオ文庫
・ 島尾ミホ 「海辺の生と死 」 中公文庫
・ 服部南郭 「唐詩選国字解 」 東洋文庫
・ 田村俊子 「あきらめ ほか」 岩波文庫
・ ディキンソン「キングとジョーカー」サンリオSF文庫
・ 谷山浩子 「悪魔祓いのひろこさん」新潮文庫
・ 村上陽一郎「科学・哲学・信仰」レグルス文庫
・ 上司小険 「はもの皮   」 岩波文庫
・ スティブンソン「旅は驢馬をつれて」岩波文庫
・ 村尾嘉陵 「江戸近郊道しるべ」 東洋文庫
・ 宇野千代 「青山二郎の話 」 中公文庫
・ サッカレ 「床屋コックスの日記」岩波文庫
・ 水田洋  「ある精神の記録 」 現代教養文庫
・ 金田一春彦「日本の唱歌  」 講談社文庫
・ 西江雅之 「花のある遠景 」 旺文社文庫
・ マーク・トウェイン「王子とこじき偕成社文庫
・ たん容  「人、中年に到るや」 中公文庫
・ 大塚光信 「コリヤード懺悔録」 岩波文庫
・ 團伊玖麿 「好きな歌・嫌いな歌」文春文庫
・ 米川正夫訳「ドストエフスキー前期短編集」福武文庫
・ 武者小路実篤「友情    」 講談社文庫         
・ 金井美恵子「書くことのはじまりにむかって」中公文庫
・ 安藤鶴夫 「昔・東京の町の売り声」旺文社文庫
・ 川本三郎 「朝日のようにさわやかに」ちくま文庫
・ ヒングリー「19世紀ロシアの作家と社会」中公文庫
・ 宮本輝  「青が散る 」 文春文庫

 それぞれのコメントが秀逸でありますが、それまで記すことはできませんので、
このなかから最後にある「青が散る」の推薦文を。
「表紙が傑作。有元利夫の絵(重奏)をトリミングしたものなのである。
有元利夫は85年38歳で逝った。私は有元利夫が好きだ。」
どこにも、宮本輝の作品のことは書いていないのだが、有元が、現在のように
普通の人にも知名度をあげたのは、この文春文庫のカバーに採用されたことも
追い風になっているのは間違いありませんです。