本屋とブックストア

 片岡義男さん83年の著作に「ブックストアで待ち合わせ」(新潮社刊)というのが
あります。雑誌「ポパイ」の創刊号から125回連載したコラムから「アメリカで出版
された本についてのついて書いたものだけを一冊にすればちょっと変わった読書案内の
ようになるはずといわれ、アメリカの静かな町の、ストックの状態のとてもいいブック
ストアでゆっくり時間をかけて本を見たり選んだりするときの楽しさがすこしでも伝わる
ならという思いをぼくは抱いた。」
 小生も学生であった70年代前半に、本屋で待ち合わせをしましたが、その時代に
ブックストアということばが似合う本屋は、どのくらいありましたでしょうか。
片岡さんの書いた物による「アメリカの静かな町のブックストア」のイメージは次の
ようなものです。
・店の横幅の中央にドアがある。
・ドアの両側に同じ大きさの広いウィンドーが左右対称にある。
・ウィンドーから店のなかがよく見えた。
・ウィンドーには面白そうな本や美しい本がいつも魅力的にディスプレイしてある。
・新刊本だけでなく、知られざる本をていねいにさがしてきてはディスプレイしている。
・店の前の並木の枝の下に、濃いブルーに塗った木製の頑丈なベンチが二つあった。
・白髪の上品な初老の女性が一人できりまわしていた。
・本及び文房具のことをじつによくしっていて、信頼感がもてた。

 日本の本好きの親父たちが行きつけにする本屋もできれば、上記のような本屋であって
ほしいと思ったのですが、このような雰囲気(ただし白髪の上品な初老の女性はいない)
の本屋が一般的になるには、これから20年近い時間を必要としたのでした。