出番を待っていた

 出番を待っていたと記しましたら、頭のなかで「世界は日の出を待ってい

る」が流れてきました。もちろん一番好きなレス・ポールとメリー・フォード

による歌と演奏のものです。


Les Paul and Mary Ford - The World Is Waiting For The Sunrise

 この曲は1918年に作られて、1919年に発表されたとのことです。

ちょうど100年前の歌ということになります。日本では大正8年ということ

になりますか。

 出番を待っていたのは、当方がずいぶんと前に買って積読になっていた本

でありました。昨日の夜にやっていたNHKのTV番組「夢の本屋をめぐる冒険」

でパリにある伝説の書店を取り上げていたのですが、まさにそのネタ本とな

るものです。

  当方が確保してあったのはこれの元版で1974年に刊行となったもの、それを

古本で買っておりました

 1919年にパリで開店した書店「シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店」

は「パリのアメリカ文化人」のたまり場として著名で、ここから多くの伝説が

生まれています。(「世界は日の出を待っている」と同じ年に開店です。) 

 その書店を初めたのがシルヴィア・ビーチさんで、その書店が紆余曲折を経て

現在も店は継続されているという話でありました。

 1974年版の訳者のあとがきから紹介です。

「1962年、たまたまパリに滞在していた私は、オデオン通り12番地を訪ねてみ

た。ビーチの書店のあったアパートの正面には重く鎧戸が下されていて、かって

詩人や作家たちの往来で賑わった書店の影をしのばせるものは何ひとつとして

感じられなかった。」

 ビーチさんはパリがナチスに占領されてから1941年に店を閉め、その書店が

あった建物にあるアパートの一室で1962年10月に亡くなったのだそうです。

もちろん亡くなったときは、いまほど有名ではありませんでした。

 訳者のあとがきは、次のように続きます。

「私はセーヌ河の河岸に辿りついた。私は丁度ノートルダム寺院とセーヌ河を

隔てた左岸に沿ったカルティエ・サン・ジュリアン・ポーヴルにある古ぼけた

一軒の小さな書店に、なにげなく入った。ウィンドーにはもっぱらアメリカや

イギリスの書籍ばかりを展示してあった。比較的奥行きのある書店で入口から

三メートル位入った所に一本柱があって、その柱にシェイクスピア・アンド・

カンパニイ書店という英語の小さな標識が釘で打ち付けてあるのに気づき驚い

た。傍にいた店員に、この書店はオデオン通りにあったビーチ書店と何か関係

あるのか尋ねてみた。店員は知る由もなかった。・・・

 しかし、私は、この書店の経営者は、きっとビーチをしのんで、彼女と同じ

形式の書店を開いていたのではないかと思う。彼女の志が誰かによって受け継

がれていることを知って、私は心温まる思いをした経験を持っている。

この書店の名前は、ミンストラル書店といった。今でもこの書店が続いている

かどうか、その後パリを訪れる機会がないので知らないが、この書店は今でも

私の記憶に不思議に残っている。」

 訳者である中山末喜さんが書き残してくれてよかったことです。

昨日にTVを見ていましたら、この「ミンストラル書店」が、その後に移転して

現在は「シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店」を名乗っているとのこと

です。仲間たちの本屋さんでありますね。

 日本の老舗本屋さんも次々と姿を消していきつつあるのですが、「志が誰か

に受け継げられて」存続するなんてことはないのかな。