丸いめがね

 そのむかしに「丸い眼鏡を返せ」というタイトルの文章を見たことが
ありました。ロイド眼鏡と呼ばれる丸い眼鏡フレームを愛用している人が、
入手することができなくなって、これまでずっと愛用していたのに、製造
中止になっては困るというような内容の文章であったかと思います。
( 橋本峰雄さんという京都の哲学者のものでした。)
 検索をかけましたら、ロイド眼鏡セルロイド製であるとありますが、
1930年代には、けっこうおしゃれなフレームであったのでしょう。
 丸いめがねのフレームというと昭和天皇がそうでありましたが、天皇のは
枠が金属製でありまして、レンズは丸いのですが、ロイド眼鏡という雰囲気は
ありません。
 丸い眼鏡愛用者として思いだすのは、久野収さんであります。
小生が久野さんことを知るようになってから、眼にする写真は、いつも丸い
眼鏡を着用しているのでありました。
 最近にロイド眼鏡と打ち込んで検索をすると、代表的なユーザーとして大江
健三郎さんの名前があがっていました。そうだよな、大江さんはいつからか、
この眼鏡をつかっているよな。もともと、あまりかっこうのよろしい眼鏡では
ありませんからして、これを使うというのは、かっこう悪いといわれても、動じ
ないだけの自信がなくてはできないのかもしれません。そうでなければ天皇
ように、凡百とは一緒にならないという自負をもつことが必要なようです。
 この時代に丸いめがねを着用するというのは、天皇と同じような存在であると
いうことを内外に知らしめるものであるのかもしれません。そのようにして考えると、
不思議なことに文学者で丸い眼鏡をかけてからの作品は、権威主義的になって
どうだまいったかと批判を許さないものになるのかもしれません。
 大江健三郎さんに続いて、井上ひさしさんも丸い眼鏡でありますが、小生が
井上作品と疎遠になったタイミングと、井上さんが丸い眼鏡を着用するように
なった時に関連があるだろうかと、ちょっとしらべてみたく思いました。
( いままでは再婚したことを機に徐々に疎遠にと思っていました。)
 そういえば、中堅では堀江敏幸さんが丸い眼鏡を着用していることがあり
ましたが、彼のために真ん丸眼鏡はよすようにといっておきましょう。